高知県西部の山間地域・梼原町
今回訪れたのは、高知県西部にある梼原（ゆすはら）町。観光やドライブ、キャンプスポットとしても人気の四国カルスト県立自然公園がある県境の町で、清流・四万十川の源流域でもあります。また、坂本龍馬が脱藩する際に通ったルートとしても知られていて、町の至る所に「坂本龍馬脱藩の道」という立札が。市街地に踏み入ると、風力発電用の大きな風車がお出迎えしてくれます。
精肉店が育てる黒毛和牛のサーロインステーキ
梼原の自然豊かな場所で育った黒毛和牛のサーロインステーキがこちら。キレイな赤みに細か～く入ったサシが今にもとろけそう！実は梼原町は、高知市街地から車で1時間半ほどのところにある町。高知市に住んでいる人からするとちょっと遠いな、という場所にあるのですが、このお肉を求めて高知市はもちろん、さらに遠方から買いに来るほどファンがいるんです。多くの肉好きを魅了する精肉店にお邪魔してきました。
町で唯一の精肉店・新谷精肉店
やってきたのはこちらの新谷（にいや）精肉店。店内では牛肉はもちろん、鶏肉、豚肉などを部位、産地ごとに取り扱っていて、コロッケやカツといったお惣菜も販売しているザ・町のお肉屋さんです。隣接する焼肉店・美味美味亭（おいおいてい）も経営していて、いつも大盛況。さらにビックリなのが、今回の返礼品の黒毛和牛、実は新谷精肉店自らが育てているんです！
今回の案内人は2代目店主
お話を伺ったのは、2代目店主の新谷正章（にいや まさあき）さん。14年ほど前から実家の精肉に携わっています。元々は精肉店だけを営んでいたものの、新谷さんが高校生の時に父親が店の隣に焼肉店をスタート。新谷さんが経営に加わってからは、さらに美味しいお肉を安定的に提供したいと畜産にも手を広げました。では、肉のプロが育てる牛たちに会いに行ってみましょう！
千枚田がある自然豊かなロケーション
お店から車を走らせること10分。まず連れて行ってもらったのは、絶景スポットとしても知られる千枚田を見渡せる小高い山。あいにくお伺いした時は真冬だったこともあり寂しい景色ですが、春は水を引き入れた水田が、夏は緑色に育った稲、そして秋になると黄金色の穂を実らせたお米たちが美しい景色を見せてくれる、とっておきの場所です。
ちょうど初夏の頃の写真をいただいたので、こちらでお楽しみください。標高約220m～1455mという高低差のある千枚田の隣に牛舎があり、暑さに弱い牛たちはストレスを感じることなく年中涼しい環境で過ごすことができます。ちなみに新谷さんのご実家もこの千枚田や牛舎と同じ場所で、子どもの頃からこの景色を見て育ったそうです。羨ましい環境ですね！
40～50頭の牛を育てる牛舎
景色を堪能したあとはいよいよ牛舎へ。新谷精肉店では常時40～50頭の牛を飼育しています。仔牛から大人になるまで過ごす牛舎と、もうすぐ出荷する牛が過ごす牛舎と、二つの建物に分けて肥育しています。また、出産を控えた雌牛が過ごす部屋や、生まれたての仔牛が住む部屋など成長に合わせてゲージを用意していました。
こちらは牛舎の中の様子。近寄っていくとエサが貰えると思った牛が顔を出してきてくれました。新谷精肉店では、24～28カ月の飼育期間を設けていて、脂の融点を下げるためにオレイン酸量を増やす飼料を使ったり、風味をよくするためにナッツを入れたりと、細かな飼料の調整を行っています。また、谷から流れ出る高水質の湧水を引いてきて牛たちに与えているのも美味しさの秘密だとか。常に質のいい肉に仕上がるように育て、味を見ながら細かに調整し、最終的な味の見極めができるのは精肉店ならではの強みですね！
肉のプロがオススメする美味しい食べ方
では、プロのこだわりが詰まった肉を食べてみましょう！精肉店のお隣の焼肉店を特別に開けていただきいざ、お肉を焼き網へ投入。
先ほども述べた通り、脂の融点が低いので熱が入るとすぐに脂がとろけてきました。片面に塩胡椒をして、強火で焼きます。表面にドリップが出てきたらひっくり返すという作業を4～６回繰り返し、まだ中が赤いうちに一旦網から下ろします。もう部屋の中はお肉の焼けるいい香りでいっぱい！
見てください！この赤身と脂が程よく残った断面と表面が香ばしく焼けたステーキを。ちなみに、このまま食べても美味しいですが、カットした肉をもう一度網へ戻して断面も軽く焼く“追い焼き”が新谷さんのオススメです。
追い焼きをすることでさらに香ばしさがアップして、肉の旨味を閉じ込めることができるそう。
では、追い焼きをしたステーキを実食！肉を口に入れると甘～い脂が溶け出して口いっぱいに香ばしい肉の味が広がります。柔らかくてキメが細かく、噛めば噛むほどに感じる肉の味にうっとり。
塩胡椒、わさび、ポン酢、焼肉のタレとどれと合わせても美味しいので、味変を楽しむのも魅力的ですね。焼肉とステーキのいいとこどりをしたようなカット後の追い焼き、家でも実践してみようと思います！
檮原の故郷の味を届けたい
最後に、新谷さんが好きだというお店の裏手の散歩道に連れて行ってもらいました。今は道が整備されて、一番最初に紹介した町の入り口がメインストリートになっていますが、昔は市街地を一望できるこの場所が町へと続く道だったそう。「龍馬もきっとここで立ち止まって景色を見ろしたはず！」と新谷さん。「ここのお肉を県外へ出た子どもに送っている人もたくさんいるし、美味美味亭の焼肉の味がふるさとの味だと言ってくれる人もいます。そんな人たちに向けてスタートしましたが、今はふるさと納税を通してこの味を全国の人たちに知ってもらいたいと思っています」と話してくれました。
育てて、売って、料理して、三拍子揃った肉のプロが理想の味を追求したサーロイン。一度食べたらリピート必至の美味しさです。
四国支部（高知県梼原町担当） / 川崎 萌（かわさき もゆ）
高知県いの町在住。おいしいものを追いかけ、絶景スポットを巡りながら、地元・いの町を中心に高知県の情報発信のお手伝いをしています。専門的なお話や自分の感じたことを、初めて記事に触れる人に分かりやすく伝えることを大切にして取材をしています。
町面積の91％を森林が占める梼原町。市街地は歩いて散策できるほどの規模ですが、ゆすはら座や三嶋神社といった歴史ある建物と、建築家・隈研吾氏が手がけた現代アートのような図書館や役場が混在する個性的な町です。カメラ片手に歩くだけで楽しいですよ♪
