伝統工芸の集積地・福井
越前漆器や越前打刃物、越前箪笥など、さまざまな伝統工芸が息づく福井県。なかでも1500年の歴史を持つ「越前和紙」は、全国トップクラスの品質と技術、生産量を誇り、工房が軒を連ねる和紙の産地には日本で唯一の紙祖神「川上御前」が祀られています。
越前和紙の品質は古くから高く評価されており、公家や武家が使う奉書紙として使われていました。明治時代以降も紙幣や公用紙として使われることが多く、現在では書画用紙をはじめ日本酒のラベルや壁紙・襖紙、雑貨などさまざまな商品にも越前和紙が使われています。
デザインの力で伝統工芸を発信したい
この越前和紙を使った商品開発を手がけたのが、福井県の北部、あわら市のデザイン事務所・有限会社ハートブレーンの小川秀夫さん。「越前和紙は水に強く、100年以上ももつほど丈夫で長持ちします。私自身も学生時代に木版画をしていて、越前和紙を使っていたことから、和紙の素晴らしさは昔から実感していました。この福井の伝統工芸をもっと多くの人にもっと知ってもらいたい。デザインの力で越前和紙の魅力が伝わるような、新しいプロダクトがつくれないかと思ったのです」
小川さんが特に魅力に感じていたのが和紙の「風合い」。手漉きならでは和紙の良さを活かすにはどうすればいいか、約2年の月日をかけてさまざまな試行錯誤を繰り返しました。
手漉き和紙とLEDが融合した新しい和紙アートが誕生
そこで小川さんが考案したのは、手漉き和紙をあしらったアートフレーム(額)でした。
「漉く人によって変化する和紙の凹凸や独特な模様は、思わず見入ってしまうほど美しいものです。しかし、そうかといって主張しすぎるわけでもなく、周りの雰囲気にも調和するので、アートフレームにすることで作品をより引き立てるのではないかと思いました」
さらに、商品化の大きな転機となったのが、和紙に印刷した作品と和紙の額との組み合わせでした。何気なく背後から光を当ててみたところ、作品と和紙の額が背後からの光に透けて、なんとも幻想的な雰囲気になったそう。こうして今までにない和紙とLEDが融合したアートフレーム「WA CHIC(和紙ック)」が誕生しました。
伝統工芸士が漉いた、世界に1枚だけの和紙を使用
「WACHIC」に使用する和紙は、越前和紙の伝統工芸士が漉いたもの。一枚一枚手漉きのため、同じ模様はなく、すべてが一点ものです。実際に商品に使われている和紙を見せていただくと、立体的な模様はまるで紙とは思えないほど繊細です。
和紙は楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)など植物の繊維からつくられますが、繊維の絡み具合によって耐久性が増すだけでなく、和紙自体の表情を変えるのも特徴の一つ。原木から切り取った植物を蒸して皮を剥ぎ、繊維に混じった細かな塵や不純物を一つひとつ手作業で丁寧に取り除いていく......。
薬品をほとんど使わず、気の遠くなるような緻密な工程を経て漉かれた和紙は、脈々と受け継がれてきた伝統工芸士の技術が結集されたものなのです。
耐久性の高いアクリル樹脂製フレームにLEDを設置
「WA CHIC」のフレームはアクリル樹脂製。光の透過率が高く、軽くて丈夫な素材のため、和紙を貼りつけても高い耐久性を保ちます。作品をやさしく照らせるよう、背面にはLED照明が取り付けられたアクリルのBOXを設置。リモコンで操作できるため、離れた位置(5m以内)からも電源の入切や光量の調整が可能です。
フレームに越前和紙を貼り合わせる作業は、スタッフが一つひとつ手作業で行っています。越前和紙は「生きている紙」といわれるほど繊細。その風合いを損ねることがないよう、独自に配合した糊を使用し、美しく仕上げています。
昼はアートフレーム、夜は間接照明に
「WA CHIC」の特徴は、なんといっても昼と夜で表情が変わること。昼間は和紙のアートフレーム、夜は空間を幻想的に照らす間接照明になります。
「ライトをつけたときにできる模様の陰影は、和紙ならではの温かい雰囲気を醸し出します。見ているだけで癒されると思いますよ」と、小川さん。シンプルなデザインで洋間、和室、海外のインテリアにもなじむため、自宅はもちろん、店舗やホテル、公共空間などさまざまな場所で活躍しそうです。
思いついた時に作品を入れ替え
また、簡単に作品が入れ替えできるのも「WA CHIC」の良さです。通常の額縁であれば、取り外して台紙に作品をずれないように固定するなどちょっとした手間がかかりますが、「WA CHIC」の場合は作品をフレームの隙間に差し込むだけでOK。
絵画作品だけでなく書や写真を入れるのもおすすめです。ライトを照らすことによって書は筆づかいや墨の濃淡が際立ち、写真はまるでその場所にいるかのような臨場感が生まれます。その時の気分や季節に合わせてお部屋の印象を一瞬で変えることができるので、どんな作品を飾ろうか考えるだけで楽しくなりそうですね。
越前和紙と名画をあなたのお部屋に
職人の技が詰まった越前和紙をもっと身近に。1500年続く伝統工芸を、あなたのお部屋に取り入れてみてはいかがでしょうか。