穏やかな瀬戸内海沿いのまち、山陽小野田市
山口県山陽小野田市は、穏やかな瀬戸内海に面したまちです。海沿いにはサッカー公園やキャンプ場、日本の夕陽百選にも選ばれているビーチなど、憩いの場が充実。平日でも夕方になると、仕事や学校を終えた市民がゆるりと立ち寄り、気持ちの良い「サードプレイス」として海辺で過ごす姿が印象的です。
実は日本初の民間セメント会社「小野田セメント製造株式会社」発祥の地でもあり、古くから工業が盛んで、さまざまなメーカーや企業が発展しています。全国から人や情報が行き交う活気あるまちだからこそ、おいしいものも充実しています。
全国の人がリピートする味覚の王者・ふぐ
その代表的な味覚は、ふぐです。全国から出張などで山陽小野田市を訪れる方に人気なのは、ダントツで山口県特産のふぐだとか。活きたまま仕入れ、卓越した技術を持ったふぐ処理師がさばき、うま味が乗った頃合いで食べさせてくれる環境は本場ならでは。それが楽しみで、出張のたびにリピートする方も少なくないそう。
本物の味を届ける、「生」にこだわった発送
ふぐと言えば、とらふぐの刺身です。職人技の結晶というべき「菊盛り」は見た目にも美しく、透明感のある薄い身を数枚持ち上げると気分は高揚、噛むと独特の食感やうま味が口福を与えてくれます。そんな魅力に満ちた山口県のとらふぐですが、今回の返礼品である「活いか・活魚料理 若新(わかしん)」のとらふぐ刺身は、「生」の状態でお届けするスペシャル感をあわせ持っています。「ふぐの本物の味を届けたい」と、冷凍技術に頼らず、冷蔵便による生の発送にこだわっています。
一度味わうとその違いは歴然のようで、食べた人から直接お店に電話があり、リピートの注文を受けることもあるとか。丁寧に配達希望日をお客と確認し、お店そのままのおいしさを届ける努力が、評判を呼んでいます。
自社の活魚運搬車で、漁師から直接仕入れ
「若新」は、国道190号線沿いに構える活いかと活魚が人気の和食店です。1986年の創業から30年以上、鮮度が良くておいしい魚が食べられる店として地元で名が通っています。
コンセプトは、「生け簀からテーブルへ直行!」。築150年の古民家を移築したという店内に入るとすぐ、大きな生け簀がありました。看板メニューの一つであるイカの活造りが味わえるのは、この生け簀があるからこそ。お客が注文すると、ここから活きたまま揚げてさばいてくれるのです。
仕入れは、日本海、瀬戸内海、響灘(ひびきなだ)という3つの海に囲まれる山口県各地から。週に2、3回、自社の活魚運搬車で漁師さんのもとへ足を運び、直接買い付けているそうなのですが、その役目は江田方志(こうだ かたし)社長自らが担当。「これが私の一番大事な仕事かもしれません。魚は繊細なので、ストレスを与えて質を落とさないよう、運ぶにもコツがいるんです」と、運搬車を見せてくれました。県外客から「魚がおいしい山口県」という定評があるのは、この仕入れ努力による賜物です。
ふぐ刺しには、適正な“熟度”と“厚さ”がある
生け簀を見ると、とらふぐが顔をのぞかせていました。「ふぐは、うま味成分が多い1〜1.5kgサイズのものを日本海側の長門市で仕入れています。魚には、活造りがおいしいものと、寝かせた方がおいしいものがあります。特にふぐなど、白身の魚は後者ですね。ふぐ刺しを引くのを、見てみますか?」と、板前さんの見事な技を拝見しながら江田社長においしさの秘密を教えていただきました。
「とらふぐは、活きの良いものをさばいて2日ほどさらしに巻き、余計な水分を除きます。その間熟成でうま味成分が増し、もちもちした弾力がある独特の食感になります。ふぐ刺しは、薄さにも意味があるんですよ」。板前さんの手元を見ると、1〜2mmほどでしょうか。「ふぐ刺しは、1度に2、3枚の刺身を取りネギを巻いてポン酢で食べますよね。厚いと食感がごわつくので薄く引きます。また、舌に乗せるときは2、3枚の方が、表面積が増えてうま味を感じやすいんです」と江田社長。適正な“熟度”と“厚さ”を踏まえて引く「若新」のふぐ刺しには、美味を極めたロジックがあるようです。
「生の発送にこだわっているのは、冷凍にするとどうしてもドリップが出てしまい、本来のおいしさを提供できかねないからです。お店と同様のクオリティで、まるでお店で食べているような感覚を楽しんでいただきたいと思っています」。真摯なその思いが味に反映され、食べた人に伝わり、リピーターが生まれているのでしょう。
秋の彼岸(9月)から春の彼岸(3月)がシーズンと言われている、とらふぐ。若新では食べる人数に合わせてフグの量が異なる3タイプの返礼品があります。生でお送りするため、返礼品のご提供も10〜3月の限定。時期を外さないようしっかりチェックしておきたいですね。
まちづくりの一助を担う、飲食業の取り組み
江田社長は、2020年から山陽小野田料飲組合の組合長に就任し、まちや業界全体の活性化にも力を注いでいます。「お互いに高め合い、地域の魅力でお客さまを呼ぶことが大事だと組合でよく話しているんです」。まちづくりに関心を抱くようになったきっかけは、20代後半に青年会議所に入ったこと。「それまでは店の運営に一生懸命で、コミュニケーションの幅が狭くなりがちでしたが、活動するようになって他業界とのつながりや人脈が広がり、店づくりとまちづくりが同じベクトルにあると考えるようになりました。飲食業という立場から、山陽小野田市をもっと魅力あるまちにしたいと思っています」。魚の仕入れから発送まで手を抜かない江田社長の姿勢が、まちづくりにも生かされているようです。
中国支部(山口県山陽小野田市担当) / 河津 梨香(こうつ りか)
山口県萩市在住、上関町出身。広島市で15年ほど編集やもの書きをし、地域おこし協力隊として山口県に帰ってきました。生活の中にある本質的なものに魅了され、その地域ならではの魅力や人々が紡いできたものを受け継ぎ、実践したいと思っています。萩のそんな部分に光を当てるリトルプレス『つぎはぎ』を、仲間3人と作っています。
出張などで訪れる全国の人から「山口県の魚はおいしい」という評判が生まれ、料飲組合の活動も盛んと聞き、人やモノ、情報が多く行き交ってきたまちならではの活気を感じました。