古い町並みと洗練されたショップが融合嘉右衛門町を歩く 栃木県栃木市

江戸時代に巴波川(うずまがわ)の舟運拠点と宿場町として栄えた栃木市は、
戦災を免れたために、江戸から昭和時代にかけての蔵や商家などが数多く残っています。
そのなかでも重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている「嘉右衛門町」は、
近年、若い世代が次々に店をオープンさせて、話題を集めています。

古い町並みと洗練されたショップが融合嘉右衛門町を歩く 栃木県栃木市

江戸時代に巴波川(うずまがわ)の舟運拠点と宿場町として栄えた栃木市は、戦災を免れたために、江戸から昭和時代にかけての蔵や商家などが数多く残っています。そのなかでも重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている「嘉右衛門町」は、近年、若い世代が次々に店をオープンさせて、話題を集めています。

江戸~昭和時代の風景が混在する「蔵の街」

江戸~昭和時代の風景が混在する「蔵の街」

 古い蔵や商家が多く残り、「蔵の街」といわれる栃木市。市内でもその趣を色濃く残しているのは、栃木駅から北に延びる「蔵の街大通り」周辺や、街なかを流れる巴波川沿いです。まずは、栃木駅から蔵の街大通りを10分ほど歩いた場所にある「とちぎ蔵の街美術館」を訪れました。
 市内に現存する蔵のなかでも最も古い部類にあたる、約200年前に建てられた土蔵3棟を改修した美術館は、蔵の街のシンボル的な存在です。漆喰の重厚な壁や立派な梁が残る、古い建物ならではの空間で、栃木市ゆかりの作家の作品などを鑑賞できます。
 美術館を出たあとは、巴波川沿いを散策しながら「蔵の街遊覧船」の発着場へ。時代劇に出てきそうな木舟に乗り込めば、すげ笠をかぶった船頭さんが竹竿で舟を操り、20分ほどの舟旅にいざなってくれます。

〈上〉船頭さんが、巴波川の名前の由来や川沿いのみどころをガイドしてくれる 〈左下〉地元では「おたすけ蔵」ともよばれている、とちぎ蔵の街美術館 〈右下〉美術館前にある水琴窟。耳をあてると澄んだ音が聞こえてくる


嘉右衛門町を盛り上げる古道具店の店主

嘉右衛門町を盛り上げる古道具店の店主

 次に向かったのは、蔵の街の中心部から北に徒歩15分ほどの「嘉右衛門町」です。日光東照宮へ向かう勅使が通ったという日光例幣使街道沿いに発展した嘉右衛門町には、見世蔵をはじめとする江戸末期から昭和前期頃の建物が数多く残り、2012年に栃木県初の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
 そんな風情ある町で、若い世代による新しい町おこしが進められています。古い空き店舗を利用して、おしゃれな店をオープンさせているのです。その原点となった「SCALES APARTMENT」を目指しました。
 店名が書かれた小さな看板を見つけたのは、町工場としか見えない建物の前です。印刷工場だった建物を改修した古道具店で、店内には所狭しと商品が置かれています。

〈上〉間口に比べて奥行きのある店内に、家具から小物までさまざまな品が並べられている 〈左下〉品物が置 かれている机や棚もすべてが商品。どんな品があるのか、見ているだけでもわくわくしてくる 〈右下〉この「SCALES APARTMENT」のほかに、嘉右衛門町内に倉庫兼店舗である「SCALES DEPARTMENT」もある

 「嘉右衛門町で店を開いたのは、偶然だったんです」と、店主の大塚悦雄さんが開業のきっかけを教えてくれました。大塚さんと嘉右衛門町との出合いは、サラリーマン時代に参加した起業塾だったそうです。そのときに訪れた知り合いの店が嘉右衛門町にあり、歴史ある町並みに一目惚れして、2010年にこの地で古道具店を開きました。
 お店に並んでいるのは、大塚さんが仕入れ・手入れ・補修をした品々。テーブルからランプ、陶器、絵画など、ジャンルは多岐にわたりますが、いずれも長い年月を経て“いい味”を醸し出しているものをセレクトして並べているそう。古道具好きの若者から海外で日本風のカフェを営む外国人まで、お客さんも商品に負けないほど多彩なのだとか。
 大塚さんは嘉右衛門町のことを多くの人に知ってもらおうと、「クラモノ。」というイベントを、2011年から毎年開催しています。嘉右衛門町の空き店舗などを利用し、雑貨や飲食などの出張販売などを行うマルシェイベントで、2019年は10月19、20日に開催される予定です。
 大塚さんのこうした活動が実を結び、若い世代によってカフェやフラワーショップなど、7つの店舗が嘉右衛門町に誕生しました。蔵の街の中心部から足をのばして訪れる観光客もだいぶ増えたそうです。

〈上〉「町内の味噌工場跡地を市が活用して新たな観光拠点ができるそうです。嘉右衛門町の今後に注目してください」と語る大塚さんは2児のパパとしても奮闘中 〈左下〉照明器具1万2000円、L字金具1個3000円など、古い物が好きな人にはたまらない品々 〈右下〉古い建物ゆえに、窓枠がゆがんでいて窓はいっさい動かないそう


築150年の建物がかわいいセレクトショップに

築150年の建物がかわいいセレクトショップに

 嘉右衛門町の古い建物を見ながら次に向かったのは、徒歩6分ほど離れた場所の「Lydie tells a small lie」というショップです。この店は、かつて屋内型の釣り堀があった建物を改修したもので、建物自体は築150年の見世蔵。店主の牛山美樹さんは、「SCALES APARTMENT」の大塚さんに相談して、現在の建物と出合ったそうです。「古い建物がたくさん残っている嘉右衛門町が直感的に気に入りました。お店も徐々にでき始めて、面白くなりそうな予感もありましたし」と、牛山さんが当時のことを話してくれました。
 この建物もSCALES APARTMENT同様に奥行きがある造りで、店舗の奥は住宅になっているそう。栃木市内からこの地に引っ越し、今では古い家屋暮らしを楽しんでいます。

〈上〉かつて釣り堀だったとは思えない、パステルカラーと白を基調にした店内 〈左下〉重厚な造りの建物とドット柄のガラス戸、ポップでキュートな店内のコントラストが楽しい 〈右下〉旅行用のトランクやウッドベースをインテリアにした店内は、牛山さんのこだわりの結晶

 「お店のコンセプトは、かわいいけど、ちょっといじわるな女の子のワードローブ」と、牛山さん。店内には、リングやネックレスを中心としたオリジナルジュエリーをはじめ、アクセサリーや衣服など、かわいいものが好きな女子にはたまらない品が並びます。
 牛山さんも「クラモノ。」の実行委員の一人で、このイベントを通して嘉右衛門町の発展を肌で感じているそうです。「クラフトショップや飲食店の出店希望が100件を超える規模にまで成長しました。古い建物を活用したいという若い世代がこれからも現れてくると思いますよ」。

 嘉右衛門町には、江戸時代にこの地を開墾し、代官職を代行してきた岡田家の宝物などを展示する岡田記念館や、江戸時代創業の油伝味噌など、みどころはまだまだあります。町内にあった味噌工場跡地の保存活用計画も発表され、嘉右衛門町はますます目が離せなくなってくるはずです。「蔵の町」栃木市の“古くて新しい”エリア、嘉右衛門町を一度、訪れてみてはいかがでしょうか。
(2019年3月)

〈上〉手染めの布花で作ったコサージュ1個3000円やバングル1個2200円など 〈左下〉アメリカから輸入したペンダントヘッドにチェーンを付けたアニマルネックレス1個3600円 〈右下〉小さくてかわいいものが好きという牛山さんが手がけたオリジナルのK10ネックレス(左、右)2万円、シルバーネックレス9000円

特産品のかんぴょうを使用 ヘルシーなご当地麺「夕顔ラーメン」

特産品のかんぴょうを使用 ヘルシーなご当地麺「夕顔ラーメン」

夕顔ラーメンとは、栃木県の特産品であるかんぴょう(夕顔の実)の天日干しを粉末にして麺に練り込んだものです。かんぴょうには食物繊維、カルシウム、カリウムが含まれていて、体に優しいだけでなく、麺の食感もやわらかくなり、のどごしもよくなるといいます。創業50年の「ふくや食堂」では、らーめん650円をはじめ、担々麺700円や辛しニラそば850円などの麺類に、いずれもかんぴょうを練り込んだ麺を使用しています。

ニラたっぷりの辛しニラそば

SPOT LIST

とちぎ蔵の街美術館(とちぎくらのまちびじゅつかん)

【電】0282-20-8228【住】栃木県栃木市万町3-23【交】JR・東武栃木駅から徒歩15分【料】企画展500円(収蔵品展300円)【時】9~17時(入館は~16時30分)【休】月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始、展示替え期間【P】蔵の街第1駐車場利用(有料)

蔵の街遊覧船(くらのまちゆうらんせん)

【電】0282-23-2003【住】栃木県栃木市倭街2-6(乗船場所)【交】JR・東武栃木駅から徒歩10分【料】乗船700円【時】10~16時(12~2月は~15時)【休】年末年始、荒天時【P】3台

SCALES APARTMENT(すけーるす あぱーとめんと)

【電】080-3157-6270【住】栃木県栃木市嘉右衛門町4-19【交】東武新栃木駅から徒歩10分【時】11~17時【休】月曜【P】5台

Lydie tells a small lie(りでぃ てるず あ すもーる らい)

【電】0282-22-5315【住】栃木県栃木市嘉右衛門町1-6【交】東武新栃木駅から徒歩15分【時】12~20時【休】月曜【P】1台

ふくや食堂(ふくやしょくどう)

【電】0282-22-3887【住】栃木県栃木市旭町25-3【交】JR・東武栃木駅から徒歩15分【時】11時30分~14時30分、17~20時(変動の場合あり)【休】火・水曜【P】6台

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