広島県西部に位置する廿日市市は、日本三景の一つに数えられる宮島や、
その宮島に鎮座する世界遺産・嚴島神社があることで知られています。
市内で作られている工芸品の一つに、嚴島神社と深い関わりを持つ神聖な陶器があると聞き、
三代にわたって伝統を守り続ける窯元を訪ねてみました。
広島県西部に位置する廿日市市は、日本三景の一つに数えられる宮島や、その宮島に鎮座する世界遺産・嚴島神社があることで知られています。市内で作られている工芸品の一つに、嚴島神社と深い関わりを持つ神聖な陶器があると聞き、三代にわたって伝統を守り続ける窯元を訪ねてみました。
まずは、1400年の歴史を持つ世界遺産「嚴島神社」を訪れました。平安時代の寝殿造りの粋を極めた名建築として知られる嚴島神社は、海上に立つ高さ約15mの大鳥居がシンボルで、本殿や平舞台、高舞台など多くの社殿が国宝や重要文化財に指定されています。回廊で結ばれた朱塗りの社殿は潮が満ちてくると、まるで海上に浮かんでいるよう。この美しい景観は、何度訪れても思わず魅了されてしまいます。
また、宮島は嚴島神社以外にも見どころが満載です。表参道商店街には名物のカキ料理やあなごめしが味わえる食事処やカフェ、もみじまんじゅうなどを販売するみやげもの店が軒を連ねています。嚴島神社参拝後には、ぜひ立ち寄ってみてください。
〈上〉約6時間毎に繰り返される潮の満ち引きで見える世界を一変させる 〈左下〉夜間のライトアップで神秘的な姿を見せる大鳥居。 〈右下〉平清盛が伝えた舞楽が奉納される国宝の高舞台 ※嚴島神社の大鳥居は2019年8月現在、修復工事のためシートで覆われています。工事の状況や期間は嚴島神社のホームページで要確認
江戸時代、安芸の国(現在の広島県西部)の旅人は、嚴島神社の御本殿下のお砂を道中のお守りとしていただき、無事旅から戻るとお守りの砂に旅先の砂を加えて倍にして返す「お砂返し」とよばれる風習がありました。その風習に深く由来している焼き物が「宮島御砂焼(みやじまおすなやき)」です。徳川期には、嚴島神社の祭礼用の祭器が御本殿下のお砂を混ぜた土で作られ、神聖なお砂を混ぜて焼く焼き物は「御砂焼」または「神砂焼(しんしゃやき)」と言われました。神様が宿る器として尊ばれてきた「御砂焼」は、時代が下るにつれさまざまな器が作らるれようになり、多くの人々に愛されています。
嚴島神社がある宮島からフェリーで約10分、宮島口の乗り場を降りてすぐの場所に立つ「山根対厳堂」は、嚴島神社御用窯として三代にわたって御砂焼を守り続ける窯元です。三代目当主の山根興哉さんが温かい笑顔で迎えてくれました。
〈上〉嚴島神社からご祈祷していただいた本殿下のお砂。器の種類によっては、パウダー状になるまですりつぶして使用する 〈左下〉神聖なお砂を練り込みながら土をこねる山根さん 〈右下〉山根さんの作品。さまざまなバリエーションがあるが、どの作品にも趣深さと優しい味わいを感じる
「嚴島神社のお砂を粘土に混ぜる瞬間が、一番厳粛な気持ちになるんです」と話す山根さん。焼き上がった作品は、混ぜた砂のキメの粗細で手触りや風合いに違いが出るため、職人の感覚で混ぜる砂の量や質感を慎重に調整しています。また、御砂焼では作業の工程で出るクズ粘土も、砂の一粒一粒に神様が宿っているという思いから捨てずに使用するため、通常の陶器の製作工程に比べて、はるかに手間がかかるのだとか。
このように手間暇を惜しまず製作された御砂焼は、県内外を問わず多くのファンからの注文が相次ぎます。そのため、現在では一部の工程を機械化するなどの工夫をしているのだそうです。「本当は、素材の土にとことんこだわり、ひとつひとつ手作りで仕上げて窯で焼き上げる。そんな御砂焼伝統の技法を復活させたいんです」と山根さんは語ります。お話を伺いながら、こうした昔ながらの技法で作られた一品も、ぜひいつか見てみたいと思いました。
〈上〉工房の屋根から突き出るレンガ造りの煙突 〈左下〉現在は電気やガスの窯を使って御砂焼を焼き上げている 〈右下〉工房では多くの職人さん達が作業に従事
工房からほど近い場所に立つ「ギャラリー耀」では、気軽に御砂焼の商品を買うことができます。山根対厳堂の看板商品である「もみじ紋」のシリーズは、本物のもみじの葉を一枚一枚貼り付けたもので風雅な味わいが特徴。ほかにも、宮島・弥山にある不消霊火堂の「消えずの火」の灰や、広島平和記念公園の「原爆の子の像」に捧げられた折鶴のお焚き上げの灰を使用した釉薬で仕上げた商品も販売しています。広島ならではの想いが詰め込まれた商品はいずれも魅力的で、思わずおみやげに買って帰りたくなりました。また、ギャラリーでは御砂焼の絵付け体験も実施。世界に一つだけのオリジナル御砂焼を作ることができます。
世界に誇る嚴島神社と、その御本殿下のお砂を使った御砂焼き。由緒正しい歴史と伝統が息づく廿日市市に、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
(2019年8月)
〈上〉看板商品「もみじ紋」のシリーズ。フリーカップ4860円など 〈左下〉色のバリエーションがかわいい「遊び心」のシリーズ。指で押すとゆらゆらと揺れる、ゆらりんこカップ2808円。飲み干さないと置くことができない、三角ぐい呑み2160円など 〈右下〉絵付け体験の費用は1404円~
「白ワインに合う牡蠣のガーリックオイル漬け」2点、「白ワインに合う牡蠣のバジルソース」1点、燻製にして風味をアップした「赤ワインに合う燻製牡蠣のオリーブオイル漬け」2点と、広島県産のカキを楽しめる加工食品3種類計5点が揃ったセット。上質なプランクトンが豊富なことで有名な瀬戸の海で育ったカキは身が大きく旨み成分たっぷり。低温でゆっくり加熱することでカキのふっくらプリプリ食感を生かした仕上がりに。ワインのおつまみとしてはもちろん、パスタの素材などにもうってつけの一品です。
※掲載の「お礼の品」は品切れや季節の都合で受付を終了・中止していることがあります。
添加物を一切使用しないこだわりの調理法で作った3種類の料理を詰め合わせで
嚴島神社(いつくしまじんじゃ)
【電】0829-44-2020【住】広島県廿日市市宮島町1-1 【交】宮島桟橋から徒歩12分【料】昇殿料300円【時】6時30分~18時(季節により変動あり)【休】無休(高潮の場合は拝観中止)【P】なし
山根対厳堂(やまねたいげんどう)
【電】0829-56-0027【住】広島県廿日市市宮島口1-2-6【交】JR山陽本線宮島口駅から徒歩3分【時】11時30分~17時30分(絵付け体験は~16時30分)【休】水曜、ほか臨時休あり【P】4台