兵庫県の内陸部に位置する丹波篠山市は、江戸時代には城下町として栄えた歴史ある土地。
この地のもう一つの顔は「食材の宝庫」として全国的にも有名な場所であること。
松茸、黒豆、山の芋、栗、猪肉、地鶏など数え上げるときりがないほどのブランド食材。
その魅力を深く知るため、知る人ぞ知る囲炉裏料理の名店「いわや」を訪ねてみました。
兵庫県の内陸部に位置する丹波篠山市は、江戸時代には城下町として栄えた歴史ある土地。この地のもう一つの顔は「食材の宝庫」として全国的にも有名な場所であること。松茸、黒豆、山の芋、栗、猪肉、地鶏など数え上げるときりがないほどのブランド食材。その魅力を深く知るため、知る人ぞ知る囲炉裏料理の名店「いわや」を訪ねてみました。
慶長14年(1609)に徳川家康の命を受けて築城された「篠山城」は、山陰道の要衝でもあった丹波篠山盆地を押さえることで、大坂の豊臣氏をはじめとする西国諸大名ににらみを利かすという意味があったとされています。明治維新以後、城内のほとんどの建物が取り壊されましたが、堀や石垣は当時のまま残され、平成12年(2000)に復元された大書院とともに篠山観光の中心的存在になっています。
篠山城の城下町として発展した市街地には、武家屋敷など多くの史跡が残されていますが、中でも江戸時代に商業の中心として栄えた「河原町妻入商家群」はぜひ立ち寄りたい場所の一つ。出格子や虫籠窓など当時の意匠を残した建物が立ち並ぶレトロで情緒あふれる景観を見ることができます。
〈上〉古絵図や発掘調査をもとに復元された大書院。一大名の書院としては破格の規模を誇る 〈左下〉大書院の上段の間では、江戸時代初期の狩野派絵師が描いた屏風絵を障壁画として転用している 〈右下〉約600m続く河原町妻入商家群には美術館、雑貨店、カフェなども点在
篠山城跡から車で約15分も走ると、目の前に「本当にこんな場所にお店があるの?」と言いたくなるような、のどかな山里の風景が広がってきます。橋を渡って谷筋を上った突き当たりに立つ茅葺屋根の食事処が今回のお目当て「いわや」です。こちらの店では冬期のぼたん鍋をはじめ、食材の宝庫・丹波篠山の粋を極めた料理を囲炉裏端で味わうことができます。
寒暖差が大きい盆地で、良い土、旨い水に恵まれた丹波篠山には猪肉や黒豆、松茸をはじめ多くのブランド食材が育まれていますが、実は、その中の一つに米があります。篠山は昔から「東の魚沼、西の丹波篠山」といわれるほど上質な米がとれる場所として知る人ぞ知る存在で、いわやの店主・岩本さんは、この立地を生かして店で提供する米を自ら作っています。試行錯誤を繰り返し出来上がった米は、なんと「関西米食味コンクール」で2年連続で最優秀賞を受賞する逸品に仕上がりました。
〈上〉宝塔の谷とよばれる谷筋を上った場所に立つ 〈左下〉店主自らトラクターで田畑を耕している 〈右下〉「旨い米を作るためには、面積あたりの収量を少なく押さえることがポイント」なんだそう。周囲の山から湧き出るミネラル豊富な湧水で育った米は、同じ湧水で炊き上げられてお店で提供される
冬期限定のぼたん鍋は、店主自らが目利きした3歳の最高級雌猪肉を自家製の合わせ味噌のだしで煮込む店の看板料理ですが、春から秋にかけては地鶏のすき焼き1人前4212円がおすすめ。兵庫味鶏という種類の地鶏を180日間自然の中で放し飼いにして育てた“与作の味鶏”を使った囲炉裏料理で、旨みが詰まった地鶏の様々な部位が堪能できます。具材の白菜などの野菜もすべてが丹波篠山産で、そのほとんどが自家製。大ぶりで味が濃い原木シイタケも岩本さんが育てたものです。
自家製の割下を注ぎ囲炉裏でグツグツ煮込むと、いい匂いの湯気が立ち上り始め、これから始まる幸せな時間を想像させてくれます。早速いただいてみると一つ一つの具材の旨みが口いっぱいに広がり、鍋が空になるまで夢中で食べ続けてしまいました。
〈上〉通常のブロイラーは平均約40日育てて出荷されるところ、与作の味鶏は180日間と手間ひまがかかっている 〈左下〉山から切り出してきた原木にシイタケの菌を植え付けている 〈右下〉お手製の火吹竹を使って炭火をおこす岩本さん
「この谷に一歩足を踏み入れると、いわやのおもてなしという前菜が始まるんです」と言う岩本さん。平安時代末期には修験道場でもあった歴史ある場所でありながら、日本の原風景とも言えるのどかな山里の風景が残る場所に立つ「いわや」。そして、その土地が持っているポテンシャルを最大限引き出す食材を生産し、その食材の味を生かす料理を提供する岩本さん。丹波篠山の旬を味わいたいなら、遠方からでもこの店を目指してわざわざ出かける価値が充分にあります。
囲炉裏端で、自家製のどぶろくを飲みながら、その出来映えを吟味する岩本さん。その姿からは、まさに丹波篠山の自然の恵みを誇りに思い、感謝して、寄り添って生きるという自らの生き様への迷いのなさを感じさせてくれました。
(2019年4月)
〈上〉この地に生まれた育った岩本さん。誰よりも丹波篠山の魅力を知り尽くしている人でもある 〈左下〉自家製のどぶろくは五百万石という酒米で造っている。店では1杯648円で提供 〈右下〉広々とした板の間に、ゆったり間隔をあけて囲炉裏が切ってある店内
丹波篠山の食材を使った絶品スイーツを販売している、篠山城下町のパティスリー「雪岡市郎兵衛洋菓子店」。人気の「丹波黒豆のチーズケーキ」と「丹波栗のチーズケーキ」は、濃厚で味わい深いチーズケーキと篠山が誇る一級品の食材との相性が抜群で、一度食べるとその組み合わせの妙に感嘆の声を上げること間違い無し! また、丹波栗の中でも特別なものを選りすぐって使用した「丹波栗ゴロリ 篠雪」も、ふるさと納税の返礼品として人気が高い注目の商品です。
※掲載の「お礼の品」は品切れや季節の都合で受付を終了・中止していることがあります。
〈左〉丹波黒豆チーズケーキは兵庫県の優れた特産品として「五つ星ひょうご」にも選ばれている 〈右〉ふるさと納税の返礼品として特別に作られた「丹波栗ゴロリ 篠雪」
篠山城跡(ささやまじょうあと)
【電】079-552-4500【住】丹波篠山市北新町2-3【交】舞鶴若狭自動車道丹南篠山口ICから車で10分【料】散策自由(大書院は入館400円)【時】8時30分~20時(11~4月は~19時)、大書院は9~17時【休】無休(大書院は月曜、祝日の場合は翌日)【P】市営駐車場利用(1日200円~)
河原町妻入商家群(かわらまちつまいりしょうかぐん)
【電】079-552-3380(篠山観光案内所)【住】丹波篠山市河原町【交】舞鶴若狭自動車道丹南篠山口ICから車で10分【料】【時】【休】周辺自由【P】市営駐車場利用(1日200円~)
いわや(いわや)
【電】079-552-0702【住】丹波篠山市火打岩495-1【交】舞鶴若狭自動車道丹南篠山口ICから車で20分【時】11~21時(20時LO)【休】無休(4~9月は木曜)【P】40台