仁淀川流域で育つ高知県・春野町産の養殖鰻
鰻と聞くと蒲焼の芳ばしい香りに心躍る人も多いはず。全34市町村の半数以上が海に面している高知県は、21軒の養鰻場があり、鰻の生産量は全国5位。中でも高知市春野町産の養殖鰻は、県内シェア約25%を占めています。
春野町には仁淀(によど)ブルーで知られる仁淀川から海へ流れ出る河口があり、地下水が豊富で、鰻が育つのに適した水質の良い軟水がたっぷり。今回紹介する返礼品の鰻も、この仁淀川流域の地下水で育った鰻です。
一貫管理で生産する春野町産の養殖鰻
「春野の地のうなぎ」は、仁淀川河口で捕れたシラス鰻(ウナギの稚魚)を中心に、春野町の養鰻場で無投薬にこだわり時間をかけて大切に育てた鰻です。昔から鰻の養殖が盛んな地域でしたが、もっと“春野町の鰻”を知ってもらいたいという想いから、1998(平成10)年に「春野の地のうなぎ」として商品化し、地域のスーパーマーケットなどでも販売をスタートしました。
企画販売するのは、1979(昭和54)年に創業した冷凍水産物の卸販売をする「株式会社拓海」です。せっかくブランド化をするなら安定的に生産ができる商品にしたいと、春野町に自社の養鰻場を保有し、シラス鰻の入池から養殖、成鰻の出荷、蒲焼・白焼の加工までを一貫生産しているフジ物産に商品づくりを委託しました。こうして誕生したのが「春野の地のうなぎ」です。
春野町・森山地区で育つ養殖鰻
鰻の養殖には、11月ごろにシラス鰻を仕入れて、翌年6〜7月の出荷に間に合わせる「長短年養殖池」と、1年間ゆっくり時間をかけて育てる「周年養殖池」などのスタイルがあります。前者で育った鰻は皮目が柔らかく、淡白な味が特徴なのに比べて、後者の鰻はしっかりとした身質で、コクのある濃厚な味が特徴です。
春野の地のうなぎは1年間かけてゆっくりと育てる周年養殖池。より自然に近い状態で育てることによって、鰻に余計なストレスをかけず健康で良質な身に仕上げていきます。良質な餌を与えて育った鰻は、加工場へと送られてさらに美味しい蒲焼に変身します。今回は、その加工場へ行ってきました!
蒲焼を製造する鰻の加工場へ!
やってきたのは春野町から車で1時間ほど。高知県香南市にあるフジ物産の工場で、鰻の選別から捌き作業、焼き、冷凍に仕上げまでをおこなっています。
移動などでストレスがかかっているため、到着後すぐには捌かず24時間プールで休ませるそうです。その後、色目やサイズなど規格ごとに選別をおこない、鰻独特のぬめりを大量に出さないように氷締めを採用しているそう。
捌いた鰻を綺麗に洗って焼き、ラインに乗せ、皮目から焼いていきます。この時に、きちんと洗わず血が付着したまま焼いてしまうと酸化が早くなり長期保存できなくなるため、細心の注意を払ってキレイに洗っているそうです。
皮が焼けると今度は身側。その後、加熱不足にならないように、蒸し機に通して、さらにもう一度火を入れます。これで白焼きの鰻が出来上がりました。さぁ、いよいよタレの出番。白焼き状態の鰻に一度タレをつけ、軽く炙って焼き付けた後、もう一度タレにつけます。さらに炙って仕上げのタレをつけると完成。タレは3回もつけるんですね。ツヤツヤの蒲焼がズラリと並んだ様子は圧巻!
仕上げのタレつけが終わった鰻は粗熱を取るために予冷室へ。ここで、急激に冷凍してしまうと氷の結晶が鰻に付着してしまうのでゆっくりと熱をとっていきます。その後、急速冷凍をして、各種検査を経て、箱詰めし、出荷を待ちます。
美味しさの決め手は焼きとタレ!
しっかりとした身質と濃厚な味の秘密は、先ほども述べた水質や餌といった養鰻場でのこだわり以外にもあります。その一つが加工場での製法。中でも最も重視しているのが「焼き」の工程で、焼き加減一つでタレの乗りが決まり、香ばしさと旨さを十二分に引き出した専門店に近い味わいが生まれます。
また、海洋深層水で仕込み、本醸造の減塩醤油をベースに、みりん、カツオ出汁、魚醤などで作ったオリジナルのタレは、まろやかで乳酸が豊富なため鰻の鮮度維持にも一役買っているそうです。こういったこだわりを随所に散りばめられるのも、徹底して生産ラインを一貫しているからだと感じました。
鰻のおいしい食べ方と鰻への想い
では、そのこだわりの詰まった「春野の地のうなぎ」を家で美味しく食べるにはどうしたらいいのでしょうか?一番は湯煎をしたうえで、魚グリルで焼き上げるのがおすすめとのこと。そうすることで、身が固くなりすぎず、香ばしい蒲焼が自宅でも食べられるそうですよ。あっつあつの炊き立てご飯に乗せるも良し、ビールや日本酒と一緒に楽しむも良し。最近はワインと一緒に楽しむ人もいるそうです。
ゆっくりと時間をかけて育てているため、大量生産はできない「春野の地のうなぎ」。「ふるさと納税を通じて、こだわりを持った鰻が高知にもあることをもっと多くの人に知ってもらいたい。これまで以上に高品質な商品づくりを徹底して仁淀川流域の養鰻場で育った春野町産の鰻がローカルフードの星になれたら」と、株式会社拓海の代表取締役・前田義英(まえだよしひで)さんは語ります。そんな想いの詰まった鰻の蒲焼を、たくさんの人に味わってもらえますように。