移住・観光の人気エリア 福岡県糸島市
福岡県の最西端にある糸島市です。海と山の自然に恵まれ、観光地としても人気のエリア。しかも福岡市のお隣で、天神や博多駅、福岡空港などへのアクセスは抜群です。そのため近年は、若い夫婦からリタイア世代まで、老若男女を問わず移住エリアとしても人気が高まっています。主要な駅は、JR筑肥線・筑前前原(ちくぜんまえばる)駅。駅から徒歩圏内には小さな商店街があり、そこから車で10分少し進めば田園風景が広がります。
「普段使いのちょっといいうつわ」を求めて訪れた「うつわと手仕事 研」は、駅からタクシーで10分ほどの場所にある住宅街にあります。築60年ほどの古民家を改装して作られた工房兼ギャラリーショップの店内には、温かみを感じる陶芸作品をはじめ、心惹かれるクラフト作品が並びます。迎えてくれたのは、そんな作品同様、穏やかな雰囲気をまとう工房の主、敦賀研二さんです。
どんな食卓にも馴染む「アイボリーシリーズ」
思わず目移りしてしまう作品が並ぶなか、特に人気なのが敦賀さんが手掛けた「アイボリーシリーズ」です。その特徴は、なんといってもその質感。マットな器の表面は少しざらつきがある肌触りで、洗練され過ぎない素朴さが残ります。淡くイエローがかる象牙色は主張し過ぎることなく、どんな食卓にもすんなりなじみそう。サイズ違いのプレートのほか、茶碗や鉢、ポットなどがあります。誕生から10年以上、多くの人に愛され続けるロングセラーです。
風合いの肝は天然灰を使った釉薬
「白い器を作りたかったんです」と敦賀さん。料理を選ばない器を目指し、アイボリーシリーズは誕生しました。焼き締めにも見える質感は、「あえて土っぽさを残したい」との思いから。独特の肌触りを生み出すために、つやが出ない釉薬を使用します。「釉薬には、いろんな木の灰をストーブで燃やした天然灰を使っています。毎回、少しずつ木の種類が変わるので、仕上がりの色味が微妙に違うんです。この色の調整が難しい。どんな色になるのか、焼けるまではっきりと分からないんです」。今でもうまく色味が出ないことも。「そんなときは、安く店頭で販売するんですけど、『この色がいいからまた作って』って声もあって。でも失敗作だから、同じ色は作れなくて」と困った笑みを浮かべます。
釉薬や化粧土のかかり具合、焼いたときに粘土から噴き出る鉄粉などの影響で、器は少しずつ色味や柄が違って見えます。象牙色だけを身にまとったもの、茶色の模様が浮き出ているもの、ほかより少し青白く見えるものなど、同じものは一つもありません。そんな違いを見比べながら、お気に入りを選ぶのも器選びの楽しみの一つ。器が見せる表情だと思えば、浮かんだ茶色の模様にも、愛らしさを感じてしまいそうです。
ちょっと上質な、いつもの食卓
返礼品となる「丸プレート」は直径20cmほど。縁の部分は1cmもない高さで、取り皿やワンプレートにぴったりです。和にも洋にも合う、シンプルだけど柔らかさがあるデザインは、どんな食卓にも合わせやすいのがうれしいポイント。電子レンジにも使えるので、気取らない毎日の食卓におすすめです。朝、いつも通りに焼いた目玉焼きやソーセージ、トーストしたパンにサラダをプレート1枚に盛り込むだけで様になり、気分が上がる朝食になりますね。
燃え続けるものづくりへの思い
敦賀さんはもともと大阪の出身。高校生のころに学校で陶芸を習ったことがきっかけで、この道を歩むことになりました。はじめは、大分県と隣接する福岡県東峰村で盛んな小石原焼の窯元へ。その後、自身の工房を持つことを決め、糸島市へ移住しました。実は糸島市、敦賀さんのほかにも多くの作家やアーティストが暮らす、モノづくりのまち。市内には百数十軒の工房があり、さまざまな作品が生まれています。毎年秋には、そんな作家たちが一堂に集う「糸島クラフトフェス」の開催も。敦賀さんは、10年以上前に実行委員会を立ち上げたメンバーの一人です。モノづくりへの思いを感じることができます。
「うつわと手仕事の店 研」では、アイボリーシリーズのほか、敦賀さんが手掛けたペールグリーンの器、冬には耐熱性の器など、日々の暮らしで身近に使える陶器を購入することができます。さらに「今は赤っぽい色の器を作りたいと奮闘中です。釉薬に銅を使って、試作を重ねています」とのこと。どんな作品が出来上がるのか、待ち遠しい気持ちが高まります。
無理せず気持ちを上げるとっておきのアイテム
私たちが生きる上で欠かせないのが、食べること。私自身、「動くために食べなければいけないから」とついつい雑に終わらせてしまうことも多々あります。でも、考えてみたら毎日必ずある「食事の時間」をそんなに粗雑に扱うのはもったいないこと。当たり前にある日常の時間だからこそ、使いやすいけれどこだわりが光るアイテムで、無理することなく気持ちを盛り上げていきたいですよね。敦賀さんの器は、使い勝手の良さはもちろんのこと、いつもの日常にすんなり溶け込んで心を満たしてくれる逸品です。