日本有数のお米の里・登米市
つやつやと輝く米粒に、ふわっと漂う甘い香り。ひと口頬張ればもっちりとして、噛めば噛むほど甘みが広がる。そんな美しさと風味のよさに「ひとめぼれ」してしまうことが名の由来となっている「ひとめぼれ」。どんな料理にも合うお米として、コシヒカリに次ぐ栽培量を誇る品種として親しまれているお米です。そんな「ひとめぼれ」が生まれた宮城県は、はるか昔から日本有数の米どころとして知られており、江戸時代から多くの米が江戸に持ち込まれていたと言われています。二代目仙台藩主の伊達忠宗の頃には江戸に出回っている米のうち3割以上が、宮城米だったと言われているほどです。
そんな米どころ宮城県の中でも、有数の稲作地帯が登米(とめ)市。市内には悠々と流れる北上川があり、川幅最大300メートルにも及ぶ東北最大の河川を利用して江戸から明治にかけて海運業で繁栄してきました。豊かな水資源を生かした米作りが盛んで、海運を利用して石巻港から江戸に多くの米を供給していたといわれています。江戸に米が登ることから「登米」という地域名が残ったと言われているほど、歴史ある稲作地帯です。
25年以上前から環境保全型農業を先進的に実践
登米市では全国に先駆けて、自然と共生する循環型の農業を四半世紀も前から取り組んできました。「農薬や化学肥料を削減し、環境負荷を軽減した環境保全米を先進的に挑戦してきた地域でもあるのです」と話すのは、みやぎ登米農業協同組合(JAみやぎ登米)の柴田政志さん。1996年には、JAみやぎ登米に合併する前の旧中田町農協の取り組みとして、生産者と消費者が中心となった「環境保全米実験ネットワーク」が発足し、栽培実験を行ってきました。
結果、化学肥料や農薬の削減だけではなく、水田や周辺環境における生態系への好影響をもたらしていることを確認。「環境保全米運動」としてそのノウハウを展開していきました。「その取り組みが地域で注目されたのが、2003年の冷害の時でした。環境保全米の田んぼの被害が最小限に抑えられていたのです。自然の力を生かす農法を、地域の農家が再確認した機会だったのでは」と柴田さんは話します。
こうした影響もあり環境保全米の作付けは一気に増加。2006年には、管轄する地域の80%以上の面積が環境保全米となるなど、サステナブルな農業が地域に普及していました。同じ年、稲作部会連絡協議会が「第35回日本農業賞の大賞(集団組織の部)」を受賞するなど名実共に認められています。
農薬・化学肥料を半分以下に抑える環境保全米
慣行栽培を基準に、農薬・化学肥料を5割以下に制限し、できる限り自然の力を生かして栽培される環境保全米。そうした農法のベースとなっているのは、畜産が盛んな登米市の特徴を生かした土づくりです。
「登米市は黒毛和牛である仙台牛が年間4500頭も出荷されるほどの一大産地。古くから耕畜連携の取り組みが行われてきました」。牛の飼育には、環境保全米の稲わらが飼料として与えられ、その家畜が生み出した堆肥によって環境保全米の土づくりが支えられています。その資源循環型の農業によって稲は育まれていますが、農薬をできる限り抑えるというのは一筋縄ではいきません。
「減農薬って言葉では簡単に聞こえるけれども、生産者にとっては本当に大変なこと。何が一番大変かって?やっぱり雑草との戦いですね」と、柴田さんは生産者の気持ちを代弁します。
水田内に草が生えることによって稲の成長を阻害してしまうだけではなく、田んぼの周りの畦道に草が生えることによって稲にとって天敵となるカメムシなどの虫が発生する原因となるほか、病気が発生する危険性も増してしまうと言います。除草剤に頼ることができない環境保全米では雑草をていねいに手作業で取り除いていく地道な作業が欠かせません。
農薬を減らした田んぼには生きものがたくさん
生産者のたゆまぬ努力によって、自然の循環の中で育まれた田んぼが黄金色に輝き、収穫を目前に控えた秋、田んぼには赤とんぼの姿がたくさん見られました。JAみやぎ登米では、環境保全米づくり運動の成果を確かめる目的で、生産者とJA職員らが一緒になって「田んぼの生きもの調査」を毎年開催しています。その調査は今年で16回目となりました。今年の調査でもカブトエビやゲンゴロウ、ドジョウ、ヤゴなど現代の田んぼではなかなか見かけなくなってしまった生きものをたくさん発見。なかでも「生きた化石」とも言われるカブトエビは田んぼの雑草を食べてくれるなど、稲の生育にも貢献してくれるといいます。
「赤とんぼが乱舞する産地を目指そう!」を合言葉にしてスタートした登米市の環境保全米の取り組み。それは20年以上たった今、黄金色の田んぼの周りを赤とんぼが舞う姿がその取り組みの成果を証明しているのかもしれません。
パックご飯とは思えない炊きたてのおいしさ
「ひとめぼれは甘みが強く、もっちりとした食感が特徴です。どんなご飯にも合わせやすく、毎日食べても飽きないおいしさですね」と柴田さんは太鼓判を押します。そんなこだわりのお米を手軽に楽しめる商品として開発されたのが、今回の返礼品の「宮城県登米市 特別栽培米ひとめぼれ ふんわりごはん」です。電子レンジで2分温めれば炊きたてのおいしさが楽しめる手軽な「パックごはん」。生産者がこだわり抜いて育てた特別栽培米に限定し、「名水百選」に選ばれている黒部川扇状地湧水群の地下水を使用して炊き上げました。酸味料・添加物不使用なので、お米本来の味わいをそのまま楽しめる返礼品です。
「レンジでチンするだけで、本当に炊きたてのようなおいしさを楽しめる。忙しい時にあると助かる便利な商品ですね」と柴田さん。発売してから10年以上。「釜で炊いたようなおいしさ」「パックご飯とは思えない」と好評でリピーターが絶えないロングセラー商品となっています。
こだわりの商品を手にすることが地域の誇りにつながる
未来を担う子どもたちに地域の農業について知ってほしいという思いから、学校給食でも環境保全米ひとめぼれの提供が2020年から始まりました。バケツによる稲の栽培を経験したり、農家さんに話を聞いたり、「食を通じて地域のことを理解する」活動を地域で続けている中で、「大きくなったら農家になりたい!」と農業に夢をもつ子どももでました。
「お米の消費量の減少に加え、どんな料理にもあうひとめぼれは外食産業への流通が多かったがコロナ禍で激減してしまった」と厳しい状況に追い込まれているそう。だからこそ、こだわり抜いた商品を手にすることが農家の誇りとなり、地域を支えることにつながるのかもしれません。毎日慌ただしい生活を送る方たちにとっても、手軽に、だけど炊きたてのような香りと味わいでほっとひと息つける。そんな「パックごはん」を試してみてはいかがでしょうか。
東北支部(宮城県登米市担当) / 浅野 拓也(あさの たくや)
宮城県南三陸町在住。埼玉県で生まれ育って、中東やアフリカを旅していたら、東北の港町に移り住んでいました。震災で多くを失った人たちが、前を向いてポジティブに歩みを進める姿のとりこに。そんなチャレンジャーたちの「しなやかな力強さ」をお伝えしていきたいです。
登米市は、私の住む港町南三陸町の内陸に位置し、生活に欠かせないほど密接な関わりのある町です。