普天間発、沖縄県民のソウルフード
沖縄県宜野湾市普天間。全国的には普天間基地のイメージが強いかもしれませんが、本島中部最大の神社・普天満宮の門前町として古くから栄え、戦後は宜野湾市の行政・商業の中心地として発展したエリアです。大きな歩道橋がある普天間の交差点付近が中心街で、学校、スーパーマーケット、銀行などが軒を連ねます。
長年人々の生活を支えてきた商店も健在で、古い家屋や街並みがまだ残っているのも魅力のひとつ。同時に、基地の一部返還地の再開発も予定され、近年新しいお店も増えつつあり、注目を集めています。そんな普天間には沖縄県民に古くから愛されているローカルフードがあります。それが「ブエノチキン」です。
ブエノスアイレス仕込みのローストチキンを沖縄に
明治以降、沖縄は絶え間なく海外に移民を送り出してきました。世界のうちなんちゅ(沖縄人)は40万人とも言われており、沖縄の経済を海外から支えてきました。
ブエノチキンの創業者・伊佐常重さんもそのひとり。常重さんは1962年、アルゼンチンへ渡り、現地で大人気だったローストチキンと出会います。野菜農園で働いた後、クリーニング店を営んでいましたが、景気悪化を機に見切りをつけ帰国。当時、沖縄で大手フライドチキンチェーン店が人気を集めていたこともあり、「これならいけるかもしれない」と、1973年にアルゼンチン風のローストチキンの専門店「ブエノチキン」を開業しました。
愛され続けて50年以上。親子で守る秘伝の味
現在伝統の味を守り受け継いでいるのが、常重さんの次男・常大さん。26歳の頃から、ブエノチキンの厨房で腕を磨き、その熟練の技でローストチキンのおいしさを決める焼き加減を見極めています。ご両親がつくったブエノチキンの味を落とさないように、と日々真摯にローストチキンに向き合う姿は職人そのもの。注文が入ると、湯気が立つあつあつの丸鶏をロースターから取り出し、慣れた手つきでカットしてくれます。
おいしさの秘密は秘伝のタレと焼き加減にあり
絶品ローストチキンをつくるには、まず素材選びから。ブエノチキンでは、県内産の若鶏を使うことにこだわります。県内の鶏肉専門の業者から生の丸鶏を仕入れるので新鮮で味が良く、また若鶏特有の柔らかい肉質もブエノチキンのおいしいローストチキンには欠かせません。
次に味付け。先代がアルゼンチンで出会ったローストチキンは鶏肉に塩をすりこんだだけのシンプルなものでしたが、ブエノチキンのレシピは現地の味を元に、うちなんちゅ(沖縄人)の口に合うように改良を重ね生まれたオリジナル。ニンニク、数種類のハーブ、塩でつくる秘伝のタレに鶏肉を一晩漬け込み、味をじっくりと染み込ませます。そして最後に味を左右する「焼き」の行程です。
ブエノチキンで目を引くのは、なんといっても年季の入った回転式のロースター。お店の一番目立つ通り沿いに、大きなロースターが2台あり、それぞれ8羽ずつ計16羽の丸鶏を一度に焼き上げます。ぐるぐるとチキンを回転させながら、じっくりと遠赤外線で2時間かけて焼きあげることで、余分な油は落ち、ふっくらとやわらかなチキンに仕上がるそう。その様子を見ていると、肉汁が滴り落ち、香ばしい食欲をそそる香りが漂ってきます。
「チキンは焼き加減が勝負だよ!」と、真剣なまなざしでロースターを見つめ、長年の経験で焼き加減を見極める伊佐さん。壊れたらもう手に入らないかもしれないというアメリカ製のロースターで、どんどんチキンを焼いていきます。
自慢のローストチキンを丸ごとお届け
今回お届けするのは、そんなブエノチキン自慢の丸鶏のローストチキン2羽です。1羽あたり3~4名分としっかりとボリュームもあるので、年末年始に家族で集まるシーンでも重宝しますよ。
ふるさと納税のお礼の品では、真空パックのローストチキンを冷蔵でお届けするので、大きな鍋にお湯を沸かし、パックのままチキンを10~15分程湯せんで温めなおしてお召し上がりください。チキンがしっかりとあたたまったら、食べやすい大きさにキッチンばさみでカットしましょう。じゅわっと肉汁があふれ出てきます。店頭では写真のように食べやすいサイズに手早くカットしてくれます。
おすすめのお召しあがり方
そのまま食べてもしっかりと味付けがされているので十二分においしいブエノチキンのローストチキン。まずはシンプルにローストチキンのうま味を堪能するのが何よりもおすすめですが、今回はとっておきのアレンジ方法も2種類ご紹介しますね。
食べきれなかったチキンがあったらサンドイッチがおすすめ!ブエノチキンのローストチキンは冷めてからも、温め直すとふっくらと柔らかくなるのでおいしく頂けます。この日はオリーブ入りのパンにクリームチーズを塗り、ほぐしたチキンをサンドしました。
文字通り「丸ごと」ローストチキンを最後まで楽しみたい方は、ぜひカレーにチャレンジ!「ローストチキンの骨で鶏ガラを取ると、最高に旨いカレーができるよ」と、伊佐さんに教えて頂いたので、早速実践。おいしく頂いたあとのチキンの骨や軟骨を1時間ほど煮込み鶏ガラスープをとり、そこに具材を投入しカレーをつくります。ニンニクも効いた、絶品カレーとして2度おいしく楽しめます。
ローカルの味をご自宅で
ブエノチキンはクリスマスが一年のうちで一番の繁忙期。12月は23日~25日でなんと1000羽もチキンを焼くというから驚きます。それくらい、県民にとって欠かせない存在で「クリスマスと言えばブエノチキン」という家庭も多いのです。欧米ではクリスマスは一家で食卓を囲み、家族の絆を確かめながら集まる日。アメリカ文化が色濃く残り、また家族や親戚で集まる機会が今でも多い沖縄で、普天間「ブエノチキン」は元祖であり、沖縄の味、故郷の味といえるでしょう。
こんなご時世ですから、ご自宅でローカルの味を楽しみながら、旅行気分を味わってみてはいかがでしょうか。同時に沖縄の歴史や文化も調べてみると、いつか沖縄を訪れる際により味わい深い旅になると思います。(撮影:平良洋・タイラヒロ)