家具生産高日本一の町で深める美しい木工の世界

九州最大の河川、筑後川の河口に位置する大川市は、
上流から運ばれてくる木材の集積地だったことから木工の町として発展しました。
最も有名なのは家具ですが、ほかにも組子や彫刻などの木工芸が根付いています。
今回は職人の技にふれられるスポットを巡り、木工の奥深さに迫りました。

家具生産高日本一の町で深める美しい木工の世界

九州最大の河川、筑後川の河口に位置する大川市は、上流から運ばれてくる木材の集積地だったことから木工の町として発展しました。最も有名なのは家具ですが、ほかにも組子や彫刻などの木工芸が根付いています。今回は職人の技にふれられるスポットを巡り、木工の奥深さに迫りました。

480年の歴史を持つ家具の一大生産地

480年の歴史を持つ家具の一大生産地

 福岡県の南西部に位置し、家具・インテリアの町として知られる大川市。大川での家具作りの起源は約480年前の室町時代後期にまで遡りますが、技術が発展したのは江戸時代後期とされています。現在も市内には家具店が数多く集まっており、長年、家具の生産高日本一を維持しています。
 町のシンボルは、旧国鉄佐賀線の鉄道橋として昭和10年(1935)に架設された「筑後川昇開橋」。現存する国内唯一の昇開式可動橋として国の重要文化財にも指定されています。昇開橋のすぐ近くには大川市観光・インテリア情報ステーション「大川テラッツァ」があり、常駐するコンシェルジュが、観光スポットはもちろん、それぞれのニーズに合う家具店まで教えてくれます。

〈上〉2017年春にオープンした大川テラッツァ  〈左下〉テラッツァでは大川市のみやげを販売するほか、大川市の特産品を使ったカフェ、組子製作体験コーナーなども  〈右下〉夕陽に映える全長507mの筑後川昇開橋。中央が可動橋となっており現在も1日8回昇降する


木の香りに包まれながら匠の技にふれる

木の香りに包まれながら匠の技にふれる

 大川テラッツァで情報を収集し、向かった先は「大川ウッドワークミュージアム」。大川市に伝わる伝統工芸「大川組子」「大川彫刻」の作品や、市内の職人が作った家具などを展示する施設です。
 エントランスの扉は重厚な木製。「もともとはガラス扉でしたが、木工ミュージアムらしく木の扉に変えたんですよ」と施設運営責任者の松尾武さん。木の扉の表面には、耐候性とデザイン性を高める手斧(ちょうな)彫りが施され、大川の職人技術の高さを伝えます。
 館内に足を踏み入れると、そこは一面木工の世界!家具や組子、彫刻がゆったりと置かれ、くつろぎながら匠の技を鑑賞できます。また2階では大川木工の歴史が写真で学べる展示も見られます。

〈上〉大川家具と大川組子が彩るロビー。「本物にふれてほしい」との理由で、展示されている家具は座ったり触れたりできる 〈左下〉扉の表面に手斧彫りのなぐり加工が施されたエントランス 〈中央下〉現代の名工や黄綬褒章を受章した大川一刀彫職人・岳野博昭氏の彫刻 〈右下〉1階奥では大川市出身の画家・野口忠行氏の絵画も展示

 大川ウッドワークミュージアムでは組子製作も体験できます。組子とは、釘や糊を使わずに、木のみで文様を組み上げる技術のこと。家具などの木工芸が盛んだった大川では組子も自然に発展し、200種以上の図柄があるとされています。
 体験では、約20〜30分で組子のコースターが作れ、個人であれば予約不要。スタッフの中村宏美さんが組み方を教えてくれるのですが、最初は思うように組めず、職人の高度な技を思い知ることに。しかし手を動かして作るのは楽しいもの。完成品は持ち帰ることができるので、旅の思い出に作ってみてはいかがでしょうか。
 ほかにも館内には、豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」の内装を手掛けた大川組子職人・木下正人氏の大型作品も展示されているので、注目してみてください。

〈上〉大川組子職人・木下氏が手がけた組子の欄間。精緻な職人技に驚く〈左下〉組子製作体験は1500円~。大川組子キットの中から好みの図柄を選び、パーツを組んでいく〈右下〉松尾さん(左)と中村さん(右)。手にしているのは体験で制作できる組子


用と美を兼ね備えたジャパニーズモダンな空間

用と美を兼ね備えたジャパニーズモダンな空間

 次に訪れた「WAZA DEPARTMENT café」は職人たちの技にスポットをあてたスペースで、商品の展示・販売とカフェが一体となっています。
 築160年の古民家を改装した店内は赤と黒に彩られ、非常に華やかな印象。壁や天井、什器の上部、カフェのフロアには大川の畳職人が手がけた畳が、また照明には家具職人と組子職人がコラボした器具が使われるなど、内装にも職人技が生きています。
 また店内には、職人技と聞いてイメージする伝統的なものではなく、今の暮らしに取り入れやすい色やデザインの商品が多く展示されています。大川の職人たちは脈々と続く伝統の技を受け継ぎながらも、現代のライフスタイルに合わせた商品開発にも取り組んでいることが伝わってきます。

〈上〉壁や天井の赤色の部分はほとんどが畳。畳には防音・消臭効果があり、空気の浄化にも役立つそう 〈左下〉家具職人・井口敬茂氏が手がけたIROSARA/OH-GIトレー1枚2万円と、漆職人・森田徹氏による堆漆塗木製スプーン8640円 〈中央下〉井口氏と、大川組子職人・木下正人氏が合作したフロア照明(参考商品) 〈右下〉畳職人・石橋直樹氏のオリジナルソファ(参考商品)

 カフェでは、自家製のシフォンケーキのほか、大川特産のあまおうを使用したいちごのスムージーやすぐ近くにある老舗醸造蔵の果実酢を使ったヘルシーなドリンクなどが味わえます。
 「2019年の春には、混ぜご飯やだご汁などの郷土料理を中心としたランチ1000円も始めます。お楽しみに!」と教えてくれたのはカフェ担当の樺島さん。ランチのプレートには家具職人・井口氏が作った木皿を使用するそうです。食事をしながら商品の使い勝手も確かめられるのは、まさに一挙両得。1日限定10食予定とのことなので、早めの時間に行くのがおすすめです。

 伝統の職人技を受け継ぎながらも進化を重ね、選ばれる商品を開発・提案。温故知新をまさに地で行く、家具とインテリアの町・大川市。産地ならではの商品を探しに訪れてみてはいかがでしょうか。
(2018年11月)

〈左上〉江戸時代後期に物流拠点として栄えた榎津地区に建ち、周辺にも古い民家が残る 〈左下〉現代的な雰囲気のカフェスペース。フロアが畳になっているせいか不思議と落ち着く 〈右〉シフォンケーキセット700円

話題沸騰! 人気店が作ったネコ専用家具

話題沸騰! 人気店が作ったネコ専用家具

シンプルかつ洗練されたデザインの家具や生活雑貨を手掛けるインテリアメーカー「広松木工」。2017年、同店のソファそのままのかたちで42%のミニチュアサイズに縮小し、職人の手で製作した「ネコ家具」を販売し話題に。ネコが気持ちよさそうに寝そべる動画も評判となり、国内のみならず海外からも注目を集めています。

「42%Furniture」11万8800円(受注生産)。広松木工 大川本店などで注文できる

SPOT LIST

大川テラッツァ(おおかわてらっつぁ)

【電】0944-87-0923【住】福岡県大川市向島2525-2【交】九州自動車道みやま柳川ICから車で30分【料】入場無料【時】10〜17時【休】月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始【P】20台

筑後川昇開橋(ちくごがわしょうかいきょう)

【電】0944-87-9919(筑後川昇開橋観光財団)【住】福岡県大川市向島地先【交】九州自動車道みやま柳川ICから車で30分【料】見学無料【時】遊歩道の開放時間9〜17時(3〜11月は〜21時)【休】月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日、強風時【P】20台

大川ウッドワークミュージアム(おおかわうっどわーくみゅーじあむ)

【電】0944-85-8607【住】福岡県大川市三丸1231-2【交】九州自動車道みやま柳川ICから車で25分【料】見学無料【時】10〜17時【休】水曜、年末年始【P】20台

WAZA DEPARTMENT café(わざ でぱーとめんと かふぇ)

【電】0944-85-9484【住】福岡県大川市榎津542【交】九州自動車道みやま柳川ICから車で30分【料】見学無料【時】11〜17時【休】木曜、年末年始【P】2台

広松木工 大川本店(ひろまつもっこう おおかわほんてん)

【電】0944-87-5911【住】福岡県大川市鬼古賀174-1【交】九州自動車道みやま柳川ICから車で25分【料】見学無料【時】13〜18時(土・日曜、祝日10時~)【休】火曜【P】10台

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