「みらい」のまちで 江戸トリップ | 茨城県つくばみらい市 の旅行レポート

平成17年(2005)の「つくばエクスプレス」開通により
都心へのアクセスが向上したことで、急速な宅地・商業地開発が進むつくばみらい市。
名前の通り、未来に向けて成長を続けるこの市に
江戸の風情を味わえる穴場スポットがあると聞き、訪ねてみました。

「みらい」のまちで 江戸トリップ | 茨城県つくばみらい市 の旅行レポート

平成17年(2005)の「つくばエクスプレス」開通により都心へのアクセスが向上したことで、急速な宅地・商業地開発が進むつくばみらい市。名前の通り、未来に向けて成長を続けるこの市に江戸の風情を味わえる穴場スポットがあると聞き、訪ねてみました。

都市部と調和するのどかな田園風景

都市部と調和するのどかな田園風景

 つくばみらい市は、平成18年(2006)に旧伊奈町と旧谷和原村が合併して誕生した新しい自治体です。大学・研究機関が集まる筑波研究学園都市にほど近く、みらい平駅を中心に、今、地方都市の自然と都会の利便性が融合したまちづくりが進行しています。
 市の西部を流れる小貝川上流を散策していると、関東三大堰の一つに数えられる「福岡堰」が見えてきました。堰とは、農業用水の調整を行うための水利施設のこと。享保7年(1722)の開設以降、この土地の農業を支えてきた福岡堰はいわば町のシンボルです。
 また、堰の周辺は、桜の名所としても有名。毎年春になると、小貝川沿い約1.8kmに渡って続く遊歩道に、約550本のソメイヨシノが花開き、一帯に広がる田園の緑と相まって見事な景色を作り出します。新興都市とはいえ、今も変わらずに残るのどかな自然に魅了されました。

〈上〉「茨城観光100選」や「茨城百景」に選定されている福岡堰。3度の大改築を経て昭和46年(1971)に現在の形となった 〈左下〉小貝川沿いの桜並木は3月下旬から4月上旬が見頃 〈右下〉近くには「福岡堰さくら公園」が整備され、市民の憩いの場となっている


江戸時代にワープ! 国内最大級の野外ロケ施設

江戸時代にワープ! 国内最大級の野外ロケ施設

 福岡堰から南へ車を走らせること20分、静かな雑木林の中に忽然と現れたのは、市立歴史公園に隣接して造られた巨大施設。今回の目的地「ワープステーション江戸」に到着です。
 実はここ、時代劇のオープンセットが建ち並ぶ、野外型ロケ施設。約5.5万㎡の広大な敷地に、城や武家屋敷、宿場街、町家通りといったセットが設営され、華やかな江戸の町並みがリアルに再現されています。しかも、ただの“張りぼて”ではなく、時代考証や建築考証にも配慮して精巧に作られている本格物。さらにリアル感を増すために、ノスタルジックに映るよう、木材の朽ち具合や金物のさび具合にまでエイジングが施されているというから驚きです。
 施設は一般公開されているので、さっそく中へ。所長の山中一郎さんに、ワープステーション江戸の楽しみ方を聞いてきました。

〈上〉叙情的な「宿場町」でのシーンは時代モノの定番 〈左下〉お濠に架かった太鼓橋。橋の両岸には、江戸庶民が往来した「大店通り」や「問屋街」が広がる 〈中央下〉徳川家康が築いた居城をイメージした「江戸城大手門」。馬を使った合戦シーンにも登場 〈右下〉建屋内に造られた室内セット。屋外だけでなく、室内でのシーンも撮影可能だ

 「時代劇の登場人物になったつもりで、場内を散策してみてください。非日常が味わえますよ」。そう山中さんに案内され、ドキドキしながら壁の向こう側へーー。足を一歩踏み入れると、そこはまさに江戸でした。目に入るものすべてがリアルで、“自分は今、江戸時代にいる!”と、まさにタイムワープ。
 元々、時代劇の撮影もできる歴史テーマパークとして平成12年(2000)にオープンしたというワープステーション江戸。しかし経営がうまくいかず5年で廃業に。その後、NHKエンタープライズが施設を買い取り、本格的な時代劇のロケ施設として平成24年(2012)に復活。今では日本の映像業界に欠かせない施設として定着しました。
 一般にはあまり知られていませんが、NHKの大河ドラマや連続テレビ小説をはじめ、映画、CMなど、数多くの作品がここで撮影されています。あの『真田丸』や『花燃ゆ』、『とと姉ちゃん』のロケ地にもなったことで、遠方から訪れるファンも多いそう。そんな人気作のロケ場所を間近で見学できるなんて、なんとも贅沢です。

〈左上〉2018年6月には近現代セットが完成し、明治から昭和初期にかけての撮影もできるように。※一般公開時期未定 〈左下〉展示コーナーでは、ジオラマを使ってこれまで関わってきた作品を紹介。どんなシーンが撮影されたか一目瞭然 〈右〉ワープステーション江戸・所長の山中一郎さん


老舗海苔店が手掛ける お洒落カフェでひと休み

老舗海苔店が手掛ける お洒落カフェでひと休み

 次に訪れたのは、またも和の風流を味わえる穴場スポット。福岡堰から車で5分ほどの場所にある、「丸山海苔店 つくば工場店」です。
 丸山海苔店といえば、安政元年(1854)に創業した日本を代表する海苔・日本茶専門店。本店は築地にあり、銀座の高級寿司店をはじめ、ホテル、料亭など国内外3000軒に海苔を卸しています。今回訪れたのは、つくばみらい市郊外にある工場。全国の主要漁場から厳選して仕入れた海苔を、熟練の職人がここで火入れ、焼き上げし、極上の海苔に仕上げています。
 さらに注目したいのは、丸山海苔店がプロデュースする日本茶ブランド「寿月堂」。「丸山海苔店 つくば工場店」では、モダンな空間で寿月堂の抹茶や煎茶、ほうじ茶などさまざまな種類のお茶とオリジナルスイーツを味わうことができ、海苔の試食や買い物まで楽しめるんです。

〈上〉店内では淹れたてのお茶とオリジナルスイーツが味わえる。なかでも「濃厚抹茶モンブラン」1300円(五穀茶付き)が人気 〈左下〉建築家・隈研吾氏が手掛けた東銀座の歌舞伎座店やパリ店にならい、つくば工場店も斬新な造りになっている 〈右下〉有明海の初摘み海苔を使用した「佐賀のはしり」1帖800円~。とろけるような甘さと上品な香りが特徴

 それにしても、日本ではなぜ昔から“海苔とお茶”がセットで扱われているのでしょうか。「諸説ありますが、江戸前寿司の食文化が生まれ、それまで高貴な品であった海苔が庶民の間で広く食べられるようになりました。湿気を嫌う海苔とお茶は保存方法が似ていて管理もしやすいことから、卸問屋が一緒に販売するようになったとか」。
 目の前で抹茶を点てながら、そんな豆知識を教えてくれたのはスタッフの加瀬純子さん。ここでは気軽にお喋りでもしながらお茶を楽しむのが流儀。茶葉の種類も豊富なので、品種や香り、舌触りの違いにも注目して、ぜひ味比べを。本格的なお茶を味わいながら、モダンな店内で過ごすひと時に癒やされました。
 
 首都圏近郊の新興都市として成長著しいだけでなく、“古き良き日本”も感じることができるつくばみらい市。みなさんも足を運んでみてはいかがでしょう。
(2018年10月)

〈左上〉毎月第1土曜には「お茶の淹れ方教室」を開催。気軽に楽しく作法を学べる(参加費1500円) 〈左下〉宇治産の最高級抹茶「円光」のセット1900円は、季節の上生菓子付き 〈右〉看板商品「特選 寿月」100g1090円や、お茶受けにぴったりの「フィナンシェ」1個230円など、品揃え豊富で買い物も楽しい

操り人形×仕掛け花火 夏の夜空を彩る伝統芸能「綱火」

操り人形×仕掛け花火 夏の夜空を彩る伝統芸能「綱火」

つくばみらい市では毎年8月下旬に「綱火」が開催されます。綱火とは、仕掛け花火をつけた人形を、お囃子に合わせて操る伝統行事のことで、江戸時代から400年以上受け継がれてきた国の重要無形民俗文化財。現在は「小張松下流」と「高岡流」の2つが残り、火難除け・五穀豊穣を祈願して執り行われます。可憐に宙を舞う人形と燃え盛る火は迫力満点です!

写真は小張松下流。小張城主であった松下石見守重綱が考案し、戦勝祈願や犠牲者の供養のために陣中で行ったと伝わる

SPOT LIST

福岡堰(ふくおかぜき)

【電】0297-58-2111(つくばみらい市観光協会)【住】つくばみらい市北山2633-7【交】つくばエクスプレスみらい平駅から車で11分【料】【時】【休】見学自由【P】福岡堰さくら公園駐車場利用

ワープステーション江戸(わーぷすてーしょんえど)

【電】0297-47-6000【住】つくばみらい市南太田1176【交】つくばエクスプレスみらい平駅から車で11分【料】入場400円(子どもは200円)【時】9時30分~16時(最終入場15時30分)【休】月曜(祝日の場合は翌日)【P】50台

丸山海苔店 つくば工場店(まるやまのりてん つくばこうじょうてん)

【電】0297-52-7156【住】つくばみらい市福岡2318-5【交】つくばエクスプレスみらい平駅から車で9分【時】10~17時【休】水曜【P】8台

綱火(つなび)

【電】0297-58-2111(つくばみらい市観光協会)【住】つくばみらい市小張3235(小張愛宕神社)/つくばみらい市高岡630(高岡愛宕神社)【交】つくばエクスプレスみらい平駅から小張愛宕神社まで車で5分/つくばエクスプレスみらい平駅から高岡愛宕神社まで車で6分【料】見学無料【時】【休】8月下旬の2日間、19時~21時30分頃に実施【P】臨時駐車場利用

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