老舗のブランド味噌や名産トマトに注目 開拓のまちへ 福島県矢吹町

町の面積の半分以上を農地が占め、のどかで美しい田園風景が広がる矢吹町は
戦後の国営開拓事業が成功した「日本三大開拓地」の一つでもあります。
フロンティアスピリットが息づいているこの地で奮闘する、
新世代の店主がいる味噌店とラーメン店を訪れてみました。

老舗のブランド味噌や名産トマトに注目 開拓のまちへ 福島県矢吹町

町の面積の半分以上を農地が占め、のどかで美しい田園風景が広がる矢吹町は戦後の国営開拓事業が成功した「日本三大開拓地」の一つでもあります。フロンティアスピリットが息づいているこの地で奮闘する、新世代の店主がいる味噌店とラーメン店を訪れてみました。

「矢吹」由来の地に残る磨崖仏群

「矢吹」由来の地に残る磨崖仏群

 数ある戦後の国営開墾事業の中でも特に規模が大きい成功を収めた地域として、青森県十和田市、宮崎県川南町と並び「日本三大開拓地」の一つに数えられている矢吹町。まず訪れたのは、その町名の由来になったという「滝八幡神社」です。平安時代の後期に奥州の戦乱で活躍した源義家が、戦勝を祝って建立した神社で、矢柄(矢の胴体)で社殿の屋根を葺いたことから、この地は「矢吹」とよばれるようになったそうです。社殿は失われていますが、歴史を伝える祠が残されています。
 滝八幡神社の近くでは磨崖仏を見ることができます。磨崖仏とは岩壁などに刻まれた仏像のことで、薬師如来や阿弥陀如来など、合計37体の仏像が高さ10mほどの断崖に彫られています。自然に囲まれたなかで仏さまに手を合わせていると、リラックスした気分になりました。矢吹町のパワースポットとしておすすめです。

〈上〉90cm以内の龕高(がんこう)に像高40~60cmの仏像が彫刻されている 〈左下〉江戸時代中期以後に製作されたものとされ、表情などがはっきりしている仏像も 〈右下〉一帯は「三十三観音史跡公園」として整備され、春のツツジなど、四季折々の花が美しい


伝統の味と新たな商品を生み出す味噌醸造元

伝統の味と新たな商品を生み出す味噌醸造元

 「三十三観音史跡公園」から車で約12分、創業70余年の「やまさ味噌こうじ店」に到着です。訪れたときはちょうど、お客さんからの注文に合わせて味噌を量り売りしていたところで、味噌のいい香りが鼻孔をくすぐります。その後もお客さんがやってきては、「1kg」、「3kg」と味噌を買っていきます。
 「量り売りしているのは、『あゆりの味噌』。味噌汁にピッタリの味噌です。糀の形をそのまま残すように作っているので、味噌汁にすると糀の粒がふわっと浮いてくるんです」と教えてくれたのは、初代からの伝統の製法と味を受け継ぐ3代目の佐藤大義さん。「こちらも初代からの味ですよ」という佐藤さんの勧めで甘酒をいただくと、優しい甘さが口に広がります。「原料が糀と水だけなので、これ以上変えようがない“完成された味”です」と、佐藤さんは笑顔で語ります。

〈上〉1kg700円のあゆりの味噌。糀の量が多く、塩気のなかにうま味や甘みが感じられる 〈左下〉福島県ブランド認証産品に選ばれた「こうじの恵み」1個820円。塩分をギリギリまで抑えていて、野菜などに付けて直接味わうのがおすすめ 〈右下〉甘酒は500㎖500円。糀の自然な甘みにファンの多い品

 2011年に塩麹の人気に火が付き、一大ブームになったときには、大義さんの父で2代目の忠義さんがすぐに塩麹を製品化したそうです。「初代の味を守るのも大事だけど、日本人の味噌の消費量が減少の一途だからね、糀屋として作れる商品は作らないと」と、忠義さん。
 初代から味だけでなくフロンティアスピリットも代々引き継がれているようで、2018年には大義さんが考案した「生甘酒ドレッシング」と「味噌糀ドレッシング」を製品化しました。「生甘酒ドレッシングはグリーンサラダにかけてほしいですね。味噌糀ドレッシングは温野菜や豚しゃぶにも合います」と、自信作をアピール。
 2018年には4代目になるかもしれない男の子が誕生。伝統を守りつつ、時代に合わせた商品を生み出してきた老舗の跡取りが、どんな商品を開発するのか、今から楽しみに待ちたいと思いました。

〈上〉ご飯にピッタリのもろみ300円、肉類と相性抜群の生醤油糀は400円。生塩麹500円、ドレッシングはどちらも485円 〈左下〉「4代目になるように今から“洗脳”しないと」と笑顔で孫をあやす2代目と、未来の4代目を抱っこする3代目 〈右下〉大型スーパーなどが集まる賑やかなエリアに2012年にオープンした八幡町店


行列ができる人気店のトマトラーメン

行列ができる人気店のトマトラーメン

 次に向かったのは、地元では誰もが知る人気ラーメン店「つむら家」です。お店の周りには「白河ラーメン」と書かれたのぼりが立っていました。白河ラーメンは、矢吹町に隣接する白河市を中心としたご当地ラーメンで、独特のちぢれのある手打ち麺が大きな特徴です。毎日午前3時に起床して200食分の麺を手打ちするという店主の円谷雅宏さんが、「低加水でいながらモチモチとした食感の麺は、手打ちでしか生み出せません」と、こだわりを語ってくれました。
 この店の名物が、地元産のトマトを使ったトマトラーメンです。このラーメンができたのは8年ほど前のこと。当時から繁盛店でしたが、町のことを多くの人に知ってほしいという思いのあった円谷さんが、名産のトマトに目を付けました。「農業が盛んな矢吹町の野菜のなかでも、会津地鶏や名古屋コーチンなど4種類の地鶏を使った店自慢のスープとの相性がよかったのがトマトだったんです」と、円谷さん。白河ラーメンとしては珍しいヘルシーさがウケて、すぐに人気メニューとなったそうです。

〈上〉トマトラーメン990円。香りと食感のアクセントにセロリが使われている 〈左下〉手打ち麺を茹で上げる円谷さん 〈右下〉最後に矢吹町産のトマトをトッピング。チンゲンサイとの色のコントラストが鮮やか

 「白河ラーメンといったら、ワンタンも外せませんよ」と円谷さんがワンタンを試食させてくれました。少し濃いめに味つけした鶏ひき肉を入れた自家製ワンタンを入れたワンタンメン870円はファンの多い人気メニューだそうです。
 つむら家は2018年2月に現在の場所に移転し、席数も駐車場の台数も増えました。お客さんが増えた分、移転前の倍の量の麺を打たなくてはいけなくなったそうで、「自分がもう一人ほしい」と苦労を語る円谷さんですが、その顔は充実感に満ちていました。

 開拓地として発展した矢吹町には、自分の店を、そして自分の住む街を活性化させようと若い店主が奮闘しています。フロンティアスピリットを持つ人を受け入れようと、町も移住者の支援に力を入れているそうです。東北自動車道のインターチェンジもあり、交通アクセスのよい矢吹町に一度足を運んでみてはいかがでしょうか。 (2019年3月)

〈上〉小上がりのテーブル席など、家族連れも利用しやすい店内 〈左下〉ツルッとした食感のワンタン。ワンタンメンには5個トッピングされる 〈右下〉店内の一部は黒板になっていて、円谷さん直筆のイラストとメッセージが書かれている

ロールケーキがおいしい! お客さんが後を絶たないパティスリー

ロールケーキがおいしい! お客さんが後を絶たないパティスリー

「Happy Berry」は、グルメ雑誌やテレビなどでも紹介される、矢吹町きっての人気洋菓子店。店の名物は、ロールケーキ。ふわふわとしていながらも、口に入れるとしっとりとした舌ざわりの生地と、あっさりとした生クリームの組み合わせが絶品です。シンプルなハッピーロールのほか、濃厚なキャラメルソースを加えたロールケーキ、季節のフルーツを盛り込んだカスタードクリームのロールケーキなど、ラインナップは常時7~8種類ほど。矢吹町のおみやげにぴったりの逸品です。

一番人気のロールケーキ、ハッピーロール1本1425円(ハーフ712円)

SPOT LIST

三十三観音史跡公園(さんじゅうさんかんのんしせきこうえん)

【電】0248-21-7800(やぶき観光案内所)【住】福島県矢吹町滝八幡112-1【交】JR矢吹駅から車で8分【料】【時】【休】参拝・見学自由【P】10台

やまさ味噌こうじ店(やまさみそこうじてん)

【電】0248-42-2900【住】福島県矢吹町八幡町535-4【交】JR矢吹駅から車で5分【時】10~18時【休】月曜【P】8台

つむら家(つむらや)

【電】0248-42-3855【住】福島県矢吹町八幡町834-1【交】JR矢吹駅から車で6分【時】11~15時(麺がなくなり次第終了)【休】月曜【P】20台

Happy Berry(はっぴー べりー)

【電】0248-44-5538【住】福島県矢吹町弥栄63-2【交】JR矢吹駅から車で7分【時】9時30分~18時【休】火曜、第2水曜【P】20台

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