幻の「はたごんぼ」 | 和歌山県橋本市 の旅行レポート

自然豊かな紀伊半島のほぼ中央に位置する橋本市は、
世界遺産にも登録された高野参詣道・黒河道が通る「高野山の玄関口」です。
この地には一度は栽培が途絶えたものの、地元住民の努力によって復活した
「はたごんぼ」という幻のゴボウがあると聞き、直売所やカフェを訪ねてみました。

幻の「はたごんぼ」 | 和歌山県橋本市 の旅行レポート

自然豊かな紀伊半島のほぼ中央に位置する橋本市は、世界遺産にも登録された高野参詣道・黒河道が通る「高野山の玄関口」です。この地には一度は栽培が途絶えたものの、地元住民の努力によって復活した「はたごんぼ」という幻のゴボウがあると聞き、直売所やカフェを訪ねてみました。

世界文化遺産に登録される 高野山の参詣道

世界文化遺産に登録される 高野山の参詣道

 今から約1200年前、空海が開いた真言密教の聖地・高野山。その霊場へと通じる参詣道「高野七口」のひとつが、橋本市と高野山の奥之院を結ぶ「黒河道」(くろこみち)です。こちらは平成28年(2016)に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として、世界文化遺産にも登録されました。
 黒河道の起点にある高野山真言宗の寺院「定福寺」に立ち寄ると、網代笠をかけ杖を手にした空海の像を発見。修行大師と呼ばれるこの像を参拝すれば、その人のかわりに修行大師が遍路をしてくれるとの言い伝えを聞き、心を込めて手を合わせました。

〈上〉定福寺の東側にある黒河道の入口。かの豊臣秀吉が雷に驚き、馬で駆け下りたとの伝説も残る 〈左下〉阿弥陀如来を本尊とする定福寺 〈右下〉定福寺の境内には国の有形文化財に登録される庫裏などもある


豊かな自然と地元農家の熱意が育む はたごんぼ

豊かな自然と地元農家の熱意が育む はたごんぼ

 定福寺を参拝したあと、いよいよ今回の旅のテーマとなる幻のゴボウ「はたごんぼ」を求めて出発! 向かったのは定福寺からほど近い、国城山(くにぎやま)の中腹にある畑です。
 生い茂るゴボウの葉にも負けない、元気いっぱいの笑顔で迎えてくれたのは、地元農家のみなさんでした。「この西畑地区は、江戸時代からゴボウの栽培が盛ん。ミカンや柿などの果樹栽培が増えた昭和初期には一時廃れましたが、地元の伝統野菜であるはたごんぼを、多くの方に広めたいんです」。
 平成20年(2008)から復活への取り組みをはじめ、現在は「プレミア和歌山(和歌山県優良県産品)」に認定されるはたごんぼ。長さ約1m・太さ約10cmにまで育つこともあるという大きさが特徴ですが、その秘密は「ゴボウ栽培に適した栄養たっぷりの粘土赤土、そして標高200mで寒暖差が大きいこと」にあるのだそう。時には眼下に雲海が広がるという畑は、澄み切った空気と水、太陽の光に恵まれた場所。この肥沃な大地が育むはたごんぼは、まさに自然のご馳走なのです。

〈上〉愛情を込めてはたごんぼを育てる「農事組合法人 くにぎ広場」のみなさん 〈左下〉春の種まきに始まり、夏には水やりや除草を毎日行い、例年11月ごろにようやく収穫を迎える 〈中央下〉橋本市の街並みを見晴らす高台の畑で栽培 〈右下〉地中深くに根をはる、巨大なはたごんぼ。ショベルカーで土を掘ったあと、傷つけないように手作業で1本ずつ掘り出す

 収穫したばかりのはたごんぼを手に向かったのは、畑のすぐ隣にある直売所「くにぎ広場」。例年11~1月の収穫時期には掘り立てのはたごんぼが、地元の新鮮野菜や果物と一緒にずらりと並びます。「普通の細長いゴボウと違い、太くて長いはたごんぼ。でも食感は驚くほど柔らかいんですよ」と食べさせていただいたのは、揚げたて熱々の天ぷら。ひと口食べれば、なるほど! サッと火を通しただけなのに芯まで柔らかく、ゴボウの香りが一気に口のなかに広がりました。「柔らかさ、強い香り、深い味わい。これが私たちが自信をもってお届けする、はたごんぼの魅力です」。
 店頭ではこちらの天ぷらやコロッケのほか、ゴボウ茶やあられなど、はたごんぼを使ったさまざまな加工品も販売。最盛期には、はたごんぼの中央をくり抜いてちらし寿司をつめた「はたごんぼ寿司」も販売されるそうです。

〈左〉はたごんぼを使ったコロッケは1個100円。※カレー風味の天ぷらは販売終了しました。(2020.10現在)〈右上〉紀の川フルーツライン沿いにある「くにぎ広場」には、ゴボウのほか季節の農産物が並ぶ 〈右下〉取材に訪れたのは8月下旬。11月になれば写真のゴボウより、さらに太く長く育つのだそう。はたごんぼの販売は例年11〜3月ごろまで。
※掲載商品については取扱状況により価格変更や終売となる可能性がございます。最新情報は「くにぎ広場」まで問い合わせください。


緑に包まれたカフェで、 はたごんぼ料理を堪能

緑に包まれたカフェで、 はたごんぼ料理を堪能

 先ほどゴボウ畑を案内してくれたうちのお一人で、「農事組合法人 くにぎ広場」の理事を務める素和治男さん。素和さんは、はたごんぼ復活プロジェクトのメンバーとして生産に取り組むだけでなく、はたごんぼなど季節の地元食材を生かしたカフェ「木間暮」(きまぐれ)を営まれています。
 くにぎ広場から車で約10分、さらに山上へとのぼった場所にあるお店は、緑に包まれた癒しの隠れ家。小鳥がさえずりそよ風が吹き抜けるオープンテラスや、ほっこりあたたかな囲炉裏を設けた店内は、心がうーんと伸びやかになるような寛ぎの空間です。

〈上〉木々のアーチと草花が彩るオープンカフェ。空席状況を問い合わせてから来店するのがおすすめ 〈左下〉眼下に広がるこの眺望! 夕方には、木の間に暮れゆく夕日を望むことから「木間暮」と名付けたそう 〈右下〉店内は囲炉裏を中心としたテーブル席

 四季折々の自然を五感で楽しみながら味わうのは、庭に設けた石窯焼きの自家製ピザです。なかでも季節の野菜を使ったミックスピザには、冬になれば、はたごんぼをトッピング。手作りのトマトソースやベーコンもたっぷり乗せて、薪火でおいしく焼き上げます。この日のランチには、自家野菜のサラダにもはたごんぼが添えられていましたが、どちらもまさに味よし香りよし!「はたごんぼはこの土地で、先祖代々受け継がれてきた伝統野菜。その想いを、おいしさを、これからも伝えていきたいですね」と素和さん。その言葉には、地元への深い愛情と誇りが感じられました。

 素和さんたち有志のメンバーは平成26年(2014)から、黒河道を実際に歩いて高野山の金剛峯寺を詣で、はたごんぼを奉納する「雑事のぼり」の風習も再現しているといいます。自然の恵みと伝統を肌で感じる橋本市の旅。ぜひみなさんも訪れてみませんか?
(2018年9月)

〈上〉テラス席のお客さんと会話を楽しみながら、ピザ生地を伸ばすところから手作りで仕上げる 〈左下〉ミックス・マルゲリータ・ツナの3種から選べる木間暮ピザランチ1600円。スープ、サラダ、デザート、ドリンク付き 〈右下〉ピザや肉料理は石窯で調理。木間暮ピザランチにメインの肉料理が付く、おまかせコース2100円もぜひ

県内生産量1位! 地元卵のスイーツにも注目

県内生産量1位! 地元卵のスイーツにも注目

橋本市は卵の生産量が県内一! 橋本市養鶏農業協同組合が運営しているパティスリー「卵菓hashitama」では、新鮮な産みたて卵をたっぷり使ったスイーツを販売しています。敷地内には卵の直売所「はしたま」と、卵かけご飯が人気の食事処「卵庵はしたま」も併設されているので、こちらもぜひ立ち寄ってみましょう。

卵の味わいや風味を生かした、ふわっふわの小峰台ロール1100円が人気No.1。こっこプリン220円や、焼ドーナツ200円もおすすめ

SPOT LIST

黒河道(くろこみち)

【電】0736-33-3552(はしもと広域観光案内所)【住】和歌山県橋本市【交】紀伊清水駅から徒歩9分(定福寺)【料】【時】【休】周辺自由【P】なし

定福寺(じょうふくじ)

【電】0736-32-2141【住】和歌山県橋本市賢堂285【交】紀伊清水駅から徒歩9分【料】【時】【休】境内自由【P】なし

くにぎ広場(くにぎひろば)

【電】0736-33-5288【住】和歌山県橋本市南馬場506-5【交】京奈和自動車道橋本ICから車で6分【時】9~17時【休】火曜【P】20台

石窯と囲炉裏とオープンカフェ 木間暮(いしがまといろりとおーぷんかふぇ きまぐれ)

【電】0736-34-2871【住】和歌山県橋本市西畑489-1【交】京奈和自動車道橋本ICから車で10分【時】11~15時【休】木曜【P】4台

卵菓Hashitama(らんかはしたま)

【電】0736-36-1102【住】和歌山県橋本市小峰台2-13-8【交】京奈和自動車道橋本東ICから車で6分【時】10~17時【休】木曜【P】100台

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