福岡県の北東部に位置するみやこ町は、
1500以上もの古墳や江戸時代の庄屋屋敷が残る、歴史ロマンあふれるエリア。
そんなみやこ町に“ジャムのアンテナショップ”という珍しい業態の店舗があると知り
訪ねてみたところ、ジャムはもちろん、絶品スイーツまで堪能することができました。
福岡県の北東部に位置するみやこ町は、1500以上もの古墳や江戸時代の庄屋屋敷が残る、歴史ロマンあふれるエリア。そんなみやこ町に“ジャムのアンテナショップ”という珍しい業態の店舗があると知り訪ねてみたところ、ジャムはもちろん、絶品スイーツまで堪能することができました。
歴史的に重要な遺跡や遺物などが多く発見されているみやこ町。国内屈指の規模の横穴式石室を持つ綾塚古墳、九州を代表する巨石墳・橘塚古墳、豊前地方の代表的な建築様式・直屋(すごや)作りの庄屋屋敷である永沼家住宅などが特に有名で、2つの古墳は国指定史跡に、永沼家住宅は国の重要文化財に指定されています。
この日最初に訪れた「豊前国分寺跡」も国指定史跡となっており、境内にそびえ立つ三重塔で知られています。遠くに英彦山山系を仰ぎつつ散策してみると、ふと天平の頃にタイムスリップしたような不思議な感慨を覚えました。
〈上〉現在の三重塔は明治29年(1896)に建てられたもの。天平13年(741)の創建当時は七重の塔だったといわれている 〈左下〉塔の二層目上部の外壁面には、寺社建築物には極めて珍しい、十二星座の彫刻が施されている。写真は左から天秤座、蠍座、射手座 〈右下〉三重塔の周辺に植えられた梅が見頃となる2月下旬には「豊前国分寺三重塔まつり」も開催
豊前国分寺跡から車で約5分、今回の目的地である「みやこ甘味舎」に到着です。ここは九州各地のジャムなどを集めたアンテナショップとして誕生した店。天井が高く広々とした売り場には、店内で作るオリジナルジャムのほか、大分や熊本、宮崎など近隣県産のジャムやドレッシング類が数多く並びます。
なかでも注目は、みやこ町の特産品であるいちじくやブルーベリーを使ったオリジナルのジャム。砂糖は使わず、デーツという果実のシロップを甘味料として使用しています。
一方で、ショーケースに並ぶ自家製ケーキやサンドイッチも見るからにおいしそう! 特にサンドイッチは、ふわふわのパンに具がたっぷり挟まれ、食欲をそそります。聞けばこのパンも店内で作っているそうです。
〈左〉オリジナルのジャムは650円〜。手作りのPOPが添えられ、選びやすくなっている 〈右上〉カフェスペースを囲むように、焼きたてパンコーナーや九州各地のジャムなどが並ぶ 〈右下〉豊前国府跡公園のすぐそばに2016年にオープン
「もともとジャム推しだったんですが、町内の方には町にいながら九州のおいしいものを、町外の方にはみやこ町の特産品を楽しんでもらいたい、と品数を増やしていった結果、バラエティ豊かな品揃えになりました」とカフェスタッフの新洞さん。今ではカフェメニューも充実し、モーニング、ランチ、スイーツタイムと、開店からクローズまでキッチンはフル稼動。
メニューには、みやこ町や周辺地域で採れた安心・安全な野菜や果物がおもに使われています。すべて注文が入ってから作られるため、出来上がるまでに少し時間はかかりますが、待つ間にみやげを選んだり、ゆったりした時間を味わうのも旅の楽しみというもの。
「みやこ甘味舎のモットーは〝笑顔あふれる空間〟。お客様にさらに笑顔になっていただけるよう、メニューや品揃えはどんどん変わっていくと思います」。行くたび新しい魅力に出合えるなんてうれしいですね。
〈上〉季節のフルーツを使ったパフェ850円とパンケーキ700円。パンケーキを焼くのはもちろん、パフェの飴細工まで注文が入ってから作るそう 〈左下〉サンドイッチ320円〜はテイクアウトのほか、スープやプチデザートが付いたプレートとして店内でも味わえる 〈右下〉九州産の生クリームがたっぷり! フルーツのショートケーキ400円
豊前国分寺跡の近くには、ほかにも注目のショップがあります。スイートポテトとレアチーズケーキがひとつになった新感覚のスイーツ「おいもっち」で知られる洋菓子店「花げしき」です。
おいもっちは、宮崎県の契約農家で作られたサツマイモやフランス産クリームチーズ、大豆由来の生クリームなど厳選素材で作られているのですが、特にサツマイモは、品質を示す等級だけでなく、形状やサイズまで指定して仕入れているのだとか。「サイズを指定することで均一に蒸し上がり、おいしいおいもっちになるんです」と代表の小野利恵さん。
蒸し上がったサツマイモは、熱々のうちに皮を剝き、すぐにつぶしてペースト状に。しっとりなめらかな口当たりを実現するため、このスピード感は欠かせないのだそうです。その後、焼成まですべて手作業。素材、製法ともにこだわり抜いています。
〈上〉おいもっち5個入り1365円。おいもの部分はなめらかな食感。適度な粒を残しているので食べごたえもある 〈左下〉「保存料や合成着色料は使用していません。安心してお召し上がりください」と代表の小野利恵さん 〈右下〉蒸し上がったばかりのサツマイモ。この自然な色がそのままおいもっちとなる
サツマイモの素朴な甘味とクリームチーズの爽やかな酸味が口いっぱいに広がるおいもっち。新感覚なのに、どこか懐かしさを感じる味わいです。それもそのはず、おいもっちの原点は小野さんが家族のおやつとして考案したものだから。
店を構え、作る量は変わっても、「家族のために」との思いで作っていた頃と変わらない手間で作られています。甘すぎない、軽やかな口当たりのおいもっちは、男女問わず幅広い年齢層に人気だそうです。
悠久の歴史ロマンが薫る豊かな自然の中で、質を追求したスイーツやグルメが味わえるみやこ町。少し春めいた日に出かけてみませんか。
(2018年12月)
〈左上〉おいもっちのほか、焼き菓子などが購入できる 〈左下〉ショーケースにはおいもっちシリーズの「かぼちゃっち」や「抹茶っち」なども並ぶ 〈右〉店の周りには小野さんが手入れした木々や草花が配され、まるでハーブガーデンのよう
みやこ町には町立の有害鳥獣加工施設があり、徹底した衛生管理ガイドラインに基づいて安全かつ衛生的に処理・加工をしたイノシシやシカを「みやこ肉」として販売しています。このみやこ肉がおいしく味わえる「農家レストラン 隠国の食伊良原」が2018年7月にオープン。みやこ肉のハムやしゃぶしゃぶ、深山汁(猪汁)をはじめ、地元の食材で作った料理が楽しめます。
猪汁が付く「隠国丼(こもりくどん)」1200円
ジビエの盛り合わせ「里山からのおくりもの」800円
豊前国分寺跡 (ぶぜんこくぶんじあと)
【電】0930-33-4666(みやこ町歴史民俗博物館)【住】福岡県京都郡みやこ町国分280【交】東九州自動車道みやこ豊津ICから車で5分【料】【時】【休】見学自由【P】20台(豊前国分寺案内所は【時】9〜16時【休】月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始)
みやこ甘味舎(みやこかんみしゃ)
【電】0930-33-3177【住】福岡県京都郡みやこ町国作453【交】東九州自動車道みやこ豊津ICから車で5分【時】10〜17時(カフェスペースは16時30分LO)【休】火曜(祝日の場合は営業)【P】30台
花げしき(はなげしき)
【電】0930-33-5008【住】福岡県京都郡みやこ町豊津292-1【交】東九州自動車道みやこ豊津ICから車で6分【時】10〜18時【休】火曜【P】10台
農家レストラン 隠国の食伊良原(のうかれすとらん こもりくのしょくいらはら)
【電】0930-55-2740【住】福岡県京都郡みやこ町犀川上伊良原408-2【交】東九州自動車道みやこ豊津ICから車で20分【時】11時30分〜15時(農産品などの直売コーナーは9時30分〜16時)【休】火曜(農繁期は臨時休業あり)【P】40台