鹿児島県の南に浮かぶ、屋久島と口永良部島からなる屋久島町。
屋久島のシンボル「縄文杉」をはじめとする屋久杉や「白谷雲水峡」で見られる苔などから
緑豊かな「山」のイメージが強い島ですが、今回は、1日数時間しか入浴できない海中温泉や
屋久島ならではの海の幸が味わえる寿司店など、「海」の魅力にフォーカスしてご紹介します。
鹿児島県の南に浮かぶ、屋久島と口永良部島からなる屋久島町。屋久島のシンボル「縄文杉」をはじめとする屋久杉や「白谷雲水峡」で見られる苔などから緑豊かな「山」のイメージが強い島ですが、今回は、1日数時間しか入浴できない海中温泉や屋久島ならではの海の幸が味わえる寿司店など、「海」の魅力にフォーカスしてご紹介します。
日本で最初のユネスコ世界遺産の一つとして、平成5年(1993)に登録された屋久島。海岸沿いの平地はハイビスカスなどが咲く亜熱帯の気候ながら、標高2000m近い山頂では北海道の札幌と同じような気候に。そのため屋久島には日本列島の自然がつめ込まれているといわれ、島独自の景観を生み出しています。
みどころとして特に有名なのが「縄文杉」。縄文杉に向かう道中にも樹齢1000年を超える巨樹・巨木の天然林が広がり、圧巻の風景を織り成します。また、苔の森と花崗岩の渓流が美しい「白谷雲水峡」は、清らかで潤いのある空気に満ちており、散策するだけで身体のなかからキレイになれそう。森にこだまする鳥の声も、日々の喧騒を忘れさせてくれます。
〈上〉樹齢7200年という説もある縄文杉。幹の周囲16.4mとスギとしては日本一の太さを誇る 〈下〉白谷雲水峡にある苔の沢。映画「もののけ姫」の舞台のモデルともいわれ、幽玄な雰囲気
大自然を満喫した後は、汗を流しに「平内海中温泉」へ。海の中から湧き出ている珍しい温泉で、1日2回の干潮時の前後約2時間ほど入浴できます。その歴史は古く、慶長4年(1599)には既に発見されていたそう。現在は平内集落の人々が管理し、区民憩いの場として大切に利用されています。
温泉は男女混浴で脱衣所もなく、着替えは岩陰で、と実にワイルド。また下着や水着などでの入浴は不可、あくまで温泉なので裸で入るのがルールです(女性のみタオルやパレオを巻いての入浴可)。温泉を管理する平内集落の区長・渡辺浩さんから事前に「観光客の方は、車で着替えて来られますよ」と聞いていたので、車内で脱衣し、裸にバスタオルのみという状態で、いざ海中温泉へ。
〈上〉海辺の岩場にしか見えないが、遊歩道の先が温泉。満潮になると温泉が水面下になるため入浴できない 〈左下〉無人のため、料金箱に料金を入れて入浴する。洗面器は無料で借りられる 〈右下〉区長の渡辺さん。集落に恩返しがしたいと、自身の仕事と並行して温泉の管理や地域の祭り、高齢者交流サロンの主宰などをほぼボランティアで行う
温泉の湯船は、岩場に自然にできた窪みを少し整備したもので、入浴するとちょうどいい深さ。海と空、波の音、そして温泉と、自然の恵みに包まれる時間はうっとりするほど贅沢です。しばらく温泉を堪能していると、入浴客がやってきて、湯船の近くでためらいなく脱衣し始めました。「地元の人たちですね。ここは情報交換の場であり社交場。農作業を終えた集落の方がほぼ毎日利用しているんですよ」と渡辺さん。
「入浴客が少ない時間帯を狙うなら、干潮のピークの2時間ぐらい前がおすすめ。湯船に残った海水が温泉と混ざって少しぬるいですが、その分、長湯が楽しめます。また夜は波の音を聞きながら満天の星空が眺められ、最高ですよ」とのこと。平内集落のホームページ( http://yakushima-hirauchi.com/ )で干潮の時刻をチェックし、海中温泉を体験しに出かけてみてください。
〈上〉海中から湧き出す温泉は単純硫黄泉。海からの潮風も抜群に心地よい 〈左下〉一番小さな浴槽は上がり湯。入ったり足を浸けるのはNG 〈中央下〉服を着たまま利用できる足湯もある 〈右下〉平内海中温泉へは、県道78号沿いのこの看板が目印
続いて訪ねたのは、平内海中温泉から車で30分ほどのところにある「寿し いその香り」。漁師一家に育った店主・渡邊力さんが自らも漁に出て、地魚や地の食材を使った料理を提供しています。早速味わった「地魚にぎり」は、いずれも脂が乗っていて身がプリップリ!
「屋久島の魚がこんなにおいしいなんて知らなかった!ってよく驚かれますが、島周辺は黒潮が流れ、海が豊か。魚種の豊富さは国内トップクラスともいわれていて、屋久島ならではのネタもあります。よりおいしく食べてもらえるよう、1〜2日寝かせたり、わざと1回凍らせて甘みや旨みを引き出したりと、魚によって仕込みを変えています」と渡邊さん。高校から調理科へ進み、大阪などで修業を重ねた確かな腕にはファンも多く、島外から季節ごとに訪れるお客さんもいるそうです。
〈上〉地魚にぎり(汁つき)2200円。渡邊さんが釣った魚か、地元の魚屋さんから仕入れた魚を使っており、すべて天然物。内容は釣果により変わる 〈左下〉渡邊さんがひとりで釣り上げた魚 〈右下〉屋久島名物の首折れサバ 。鮮度を保つため、水揚げをする時に首を折って血抜きすることからこの名でよばれる。刺身で味わうのがおすすめ
「寿し いその香り」がある安房地区の漁港は、トビウオの漁獲量日本一を誇り、写真の姿揚げのほか、寿司や刺身、つきあげ(すりみ揚げ)などさまざまに味わえます。またメニューには、カメノテやオジサンなど、見慣れない名前がずらり。「気軽にお尋ねくださいね。どんな魚か解説しますよ」と接客を担当する奥様の邦子さん。良い魚が揃わない日は昼の営業を休むこともあるそうなので、事前に電話で予約してから訪れるのがおすすめです。
2019年5月の豪雨により、一部立ち入りを制限されていた施設などがありましたが、現在は規制が解除され、すべて利用できます。大自然を五感で楽しめる屋久島。今こそ行き時ではないでしょうか。
(2019年9月)
〈上〉トビウオの姿揚げ880円。カリカリに揚がった羽も食べられる 〈左下〉カメノテの蒸し焼き770円。ゴツゴツとした殻を割って中身を味わう 〈中央下〉店を切り盛りする渡邊さんご夫妻 〈右下〉県道77号沿いの分かりやすい場所に立つ
屋久島の漁師・時洋一さんご夫妻が採った「亀の手」と「いそもん」のセット。亀の手とは甲殻類の⼀種で、エビやカニと同様、みそ汁にするといいだしが出るそう。これからの季節なら、鍋の具にも重宝します。いそもんとは⼩型のアワビのような⾙で、さっと茹でるか、殻を下にして焼いて醤油を垂らして味わうのがおすすめ。屋久島の磯の香りが感じられる珍味です。
※掲載の「お礼の品」は品切れや季節の都合で受付を終了・中止していることがあります。
〈左〉大きいサイズの亀の手(写真手前)は茹でて中身を食べることもできる 〈右〉磯場で仲睦まじく漁をする時さんご夫妻
縄文杉(じょうもんすぎ)
【電】0997-43-5900(屋久島町観光まちづくり課)【住】鹿児島県熊毛郡屋久島町【交】屋久島空港から屋久杉自然館まで車で約20分、屋久杉自然館より荒川登山バスに乗り、荒川登山口バス停まで約40分。バス停から縄文杉までは徒歩約5時間【料】荒川登山バス往復券1400円(前日までに要購入)+山岳部環境保全協力金1000円(山中泊での入山の場合は2000円)【時】【休】散策自由。ただし荒川登山バスの運行期間(3月1日~11月30日)は荒川登山口への車両乗り入れは不可【P】荒川登山バス専用駐車場160台
白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)
【電】0997-42-3508(屋久島レクリエーションの森 保護管理協議会)【住】鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦岳・石塚国有林内【交】屋久島空港から車で45分【料】森林環境整備推進協力金500円【時】【休】散策自由(冬季は雪のため通行止めの場合あり)【P】40台
平内海中温泉(ひらうちかいちゅうおんせん)
【電】0997-47-2953(平内区事務所)【住】鹿児島県熊毛郡屋久島町平内【交】屋久島空港から車で40分【料】清掃協力金200円【時】【休】1日2回の干潮の前後約2時間のみ【P】10台
寿し いその香り(すし いそのかおり)
【電】0997-46-3218【住】鹿児島県熊毛郡屋久島町安房788-150【交】屋久島空港から車で10分【時】11時30分〜13時30分LO、17時30分〜21時LO【休】火曜、水曜の昼【P】10台