日本屈指の名料亭が認めた、高知産のブランド苺
一粒のイチゴがもたらす、満足度。ここまで高いものは、あまり出会えないかもしれません。通常サイズとくらべてかなり大きく、どこをかぶりついてもジューシーで濃厚な甘み、華やかな香りが広がる「煌稀(きらめき) の果実」は、脱サラして故郷に戻り、“自分ができること”を一人で極めてきたイチゴ農家 森 強(もり つよし)さんがつくる果実ブランドです。日本屈指の料亭「京都吉兆」の水菓子にも採用されている希少なイチゴが、今回ご紹介する高知県高知市のお礼の品です。
高知市の中心部から車で20分ほど走った先に広がる、春野地区。全国で水質一位となった仁淀川(によどがわ)水系の水に恵まれ、全国的に見ても日照条件がよく、フルーツトマトの産地としても知られています。この春野地区で「森強の苺農園」を営む森さんを訪ねました。
森さんがつくるイチゴは、通常の2、3倍、ケーキ用の5、6倍の大きさ。ここまで大きいと「薄味なのでは?」と思われるかもしれませんが、「煌稀の果実」は、このサイズでもまんべんなく甘さが行き渡り、味が凝縮されていて濃厚。イチゴのイメージを、見た目でも味わいでも大きく変える逸品です。
「農業の知識がまったくない素人だったので、このイチゴができたんやと思っています」。そんな意外な言葉から、森さんのインタビューは始まりました。
農業の常識ではなく、論文や本から学んでたどり着く
森さんは、工業系の高校・大学を卒業後、県外の造船関連企業へ就職。その2年後、実家の都合で、高知へ戻ることになります。それから、友人の農家を手伝ったことがきっかけで、農業を始めるようになった森さん。離農する農家からビニールハウスを借り、イチゴの栽培に挑むことに。イチゴの産地でもない地域で、しかも農業をどこかで学んだわけでもありません。周囲から“無謀だ”といわれながらのスタートでした。
それから3年間、苗の病気など、悪運も重なって大赤字が続きます。「とても苦しかった」日々を送りながらも、 栽培方法などの論文や本などを読み漁り、実践、失敗を繰り返しました。そして4年目、有機と慣行栽培の“いいところ”を取り入れた育て方で、味が濃厚で甘みたっぷりの特大イチゴが生まれました。
認められる。そしてまた、試練の人生
その味が次第に認められるようになると、2014(平成26)年には、高級料亭「京都吉兆」嵐山本店が「水菓子」として採用。「厳選した食材しか扱わない京都吉兆さんに『これならそのまま出せる』と認められたことは、本当に励みになりました」と森さんは、そのときの喜びを語ります。
ところが、これまでの努力がようやく実を結んだと安堵したのも束の間、生死に関わる生まれつきの病が発覚し、一年半もの間、入院生活を送ることに。「離れていくお客さんもいると覚悟していたのですが、私のイチゴを待っていてくれました」。代わりのないおいしさだったからこそ、お客さんはその時を待ち続けていたのです。
品種のポテンシャルをあげる、という考え方
今は、新設した広さ1400平方メートルのビニールハウスで、「あまおとめ」「紅ほっぺ」「さちのか」「やよいひめ」の4品種を栽培しています。「より良い品種を探し求め、肥料や栽培技術にも『これでいい』と納得するのではなく、よりおいしいものを追求しています」と森さん。いい意味で、「こだわらない」ことを貫いています。
今回のお礼の品では、4品種のなかから、その日の「一番おいしいもの」と感じた苺を厳選。360g(9粒か12粒)分を、朝につんでその日のうちに発送し、鮮度も“保証”してお届けします。
濃厚な味わいの後の、香りの余韻もたのしんで
工学系出身の森さんは、ロジックや科学的根拠にも重きを置きます。高知県工業技術センターで、味覚センサーを用いて「甘味・旨味・塩味・酸味・苦味」の計測を行い、公正なデータとして数値でおいしさを“見える化”。みなさんの元に届く“おいしさ”は感覚的ではなく、“たしかなもの”です。
お手元に届いたら、練乳などをかけずにぜひ、そのまま食べてみてください。噛んだ瞬間、ジュワッとあふれる果汁のみずみずしさにまずは驚くはず。その濃厚な甘み、旨みを口いっぱいに感じたあと、残り続ける香りの余韻に浸ってくださいね。ちなみに、一口目は、ヘタを取って、ヘタの付いた方から食べてみて。イチゴは先端部分が一番甘いので、味わいと香りの余韻がより強く残りますよ。
お客さんの口福の瞬間、食の価値を届けたい
「私がつくるイチゴを食べて、お客さまが喜んでくれたり、幸せに感じてもらう瞬間を感じてもらったりしたらうれしいですね。これからも、おいしさを追求し、食の価値を届けていきたいです」と森さん。
農家としての生きざまやプライドを写しだす、「煌稀の果実」。口に含めばだれもが笑顔になる“口福の赤”を、心ゆくまで味わってみてくださいね。
四国支部(高知県高知市担当) / ハタノ エリ(はたの えり)
宮崎県の海のそばで生まれ育ち、高校卒業後は大学、仕事、夫の転勤を理由に全国各地10カ所以上で暮らしました。2017年、愛媛県松山市に移住。現在は、ライター、エディター、コピーライターとして、取材対象の言外からあふれるものを拾いながら、ひと・もの・ことを、ことばで表現しています。
味のある老舗、レトロな路面電車など、時代が変わっても“変わらないもの”がたくさんある高知市。それは、暮らす人たちが自分たちのまちを大切にしているからこそ。人懐っこく、おいしいものにあふれた高知市の風土をぜひ一度、体感してもらえたらうれしいです。